聖母像の見た夢 公演情報 劇団B♭「聖母像の見た夢」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人の生きる拠り所のような場所、それを2つの時を隔てて紡いだ物語。1つは明和9年2月29日に起きた江戸の大火、もう1つは昭和20年8月9日に投下された原爆、何方もその出来事を忘れないために遺しておきたい象徴的なもの。その在り様を硬軟取り混ぜて描く。重たい内容であることから、敢えて笑わせることによって観せる工夫をしたのであろうか。

    物語は2つの時代を交互に描き 交わることはなく、ラストになって ようやく(輪廻)転生を思わせる奇跡のような繋がり。先に記した江戸の大火で焼け残った一本の銀杏の木と原爆で焼け残った浦上天主堂の遺壁(悲しみの聖母像)の存否への思いが肝。銀杏の木は、大火によって新芽が出ないため奉行所が伐採すると決めた にも関わらず残り、東京大空襲を経て今もある。一方、浦上天主堂の遺壁は市議会で保存が可決されていた にも関わらず、取り壊された。その違いは何か を問うているよう。伐採や破壊をすれば 二度と戻らない、そのことをしっかり認識しておくことが大切。

    当日パンフに「第二回にして、役者の平均年齢が半分以下になった・・・役者が若返ったのではなく若い人が増えただけ」とあるが、それだけに演技力に差が観えたのが惜しい。これは場数の問題でもあるから劇団としての伸び代。ちなみに若手は「劇団綺畸」(⇦如月小春らが結成した劇団)から出演している。
    (上演時間2時間10分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央に山(三角オブジェ)を模し、その後ろの上手/下手に等間隔に木平板が立っている。ほぼシンメトリーだが、下手の上にステンドグラスの窓があるのが唯一の違い。山と記したが、劇中では主に江戸時代の火消し<纏>が屋根に上っている様子。また 木平板は卒塔婆を連想した。舞台セットは作り込んでいないが、それは2つの時代を交互に描くため場景(情景)を固定させないためだろう。

    物語は、江戸の町火消(を)組の纏持 七五郎が或る火事で屋根から落ちて、高い所が怖くなって火事場で冷静な判断が出来なくなった。周りは皆 知っているが、本人はどうしてもそれを明かすことが出来ない。を組の娘(養女) 安寿と結婚したが、彼女は幼い頃 母を火事で亡くし、銀杏が母の代わりとなって彼女を守ってくれた。それが浅草寺の御神木。纏持として安寿の心の支えになりたいと…。

    一方、長崎への原爆投下によって街は壊滅し死者が、そんな中 七瀬は幼い娘から母が火傷で水を欲しがっている旨懇願される。しかし どうすることも出来ずその場を立ち去った。そのことを悔い苦しみ 修道院の懺悔する。聞いていたシスター杏珠は記憶の底から或ることを想い出す。この場面が涙を誘う。一刻も早く 焼失した浦上天主堂の跡地に新たな天主堂を建設したい。そのためには「悲しみの聖母像」を壊さなければ…。

    それぞれの話が交互に描かれ交わらない。その観せ方は、重いテーマでありながら 敢えて笑いを挿入し気が滅入らないよう工夫している。漢字は違うが、江戸時代の火消し夫婦は七五郎と安寿、昭和時代は七瀬とシスター杏珠、時代を超えて2組が輪廻再生し想いを果たす奇跡のような物語。残したい想い、それは戦禍を忘れないという”象徴”となる「悲しみの聖母像」ではなかったのか。なぜ移設出来なかったのか、そんなことを考えさせる好公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/01/24 21:14

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