AとBと一人の女 公演情報 演劇ユニット 平成レトロ「AとBと一人の女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    別役実の初期作品。上演時間一時間少し切る程度。
    別役戯曲の原型が判りやすく表れているな、と感じたのは、二人の登場人物が「何か」についてはある合意を持ちつつ、同時に理解不能な領域はそのままで立ち入らず、それでも対話を成立させている、或いは対話の体を維持することに合意している、という事。一方の突飛に見える言動も、他方は受け取り、又は打ち返すのだが、これらの対話が成立するための「ある精神状態」は、俳優が探り当てねばならぬ「戯曲からの難題」のようである事も、この作品に既に見られる。
    本作所収の第二戯曲集「不思議の国のアリス」解説を開いた所、作者による執筆履歴によれば本作は第一作であった。

    ベケット(のゴドー)を観た衝撃と影響を語っている別役氏は、二人の対話ともつかぬ会話を(我もと)書き始めたのではないか。だがひたすらゴドーを待つ二人のようにはならず、無為に等しい言葉のやり取りの中から人間の行動が起こり、事態が変じる・・これもまた人間の真理(その行動と事態をどう意味づけるかは解釈する者次第)。
    戯曲は1961年に書かれ、上演とある。言うまでもなく第二次大戦の過去は「遠くなりにけり」とは言いじょう、未だ十数年前という時代。戦った一方の連合国軍側は国際秩序を紊乱する枢軸国側を諫めて平定する、という「合理的目的」を完遂した側であるのに対し、日本は自らの内の愚かさ、責任を取る者のいない決定に国全体が引き摺り回された「非合理」を抱えた側である(歴史的にそういう立ち位置に置かれた側)。
    日本(人)の深層を探る旅(作品を書く営為)の端緒で作家はそこへ行き着いてしまった。以後その変奏を書き続けたとも言えるのが別役実という劇作家である。(と、断定するのに躊躇を感じないのもこの作家の偉大さ。)

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    2026/01/04 12:00

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