『ジョルジュ』/『トロイメライ』 公演情報 座・高円寺「『ジョルジュ』/『トロイメライ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『トロイメライ』

    ショパンから始まりロベルト・シューマン、クララ・シューマン、ヨハネス・ブラームスと彩りある選曲。

    ピアニスト秋山紗穂さんは演奏中、感極まると顔を客席頭上の虚空にふと向ける。かつてプレミアが付いた切手、『見返り美人図』を思わせる演奏上のテクニック。観客は更なる曲への陶酔を促される。大きな黒馬を抱きかかえ撫でるように奏でる。

    19世紀、ザクセン王国(現ドイツ)のライプツィヒ、優れたピアノ教師フリードリヒ・ヴィークの娘、クララは早熟の天才だった。9歳でプロデビュー、ヨーロッパ中を父と共に演奏旅行。女性初のプロ・ピアニストとなり、天才少女と大人気を呼ぶ。1828年8月、ロベルト・シューマンがフリードリヒのレッスンを受ける為住み込む。二人の出会いはクララ8歳、ロベルト18歳の時。1835年12月、兄と妹のような関係だった二人の恋心は燃え上がる。クララ16歳、ロベルト25歳。

    月影瞳さんは夫ロベルトを亡くしてからのクララが凛として輝く。強い女。76歳で亡くなるまで屹立した気高い精神。

    亀田佳明氏は下唇を噛む子供っぽい表情が可愛らしい。彼目当ての女性客がずっと彼だけを凝視していた。月影瞳さんや秋山紗穂さんには目もくれず。

    一番面白かったシーンはブラームスがクララに新作の楽譜を送って感想を求める。ピアノを挟んで上手下手
    の椅子に腰掛ける文通スタイルを崩し、亀田佳明氏はすたすた月影瞳さんのもとまで歩いて行く。手厳しいコメントを下す月影瞳さん。余りにキツイ物言いに亀田佳明氏は「どう思います?」と言いたげにピアノ前の秋山紗穂さんを振り返る。秋山紗穂さんは「ねえ」と同意の困り顔。スタイルが完成されているだけに崩しが新鮮で面白い。まだまだこのジャンル、斬新な演出は可能だと思わせた。

    ネタバレBOX

    最近の研究ではロベルト・シューマンは1831年、ヴィーク家の使用人クリステルと交際し梅毒をうつされる。右手の人差し指と中指が思うように動かなくなりピアニストを断念、作曲家の道を選ぶ。
    1836年頃、クララとの面会も文通もフリードリヒに禁止され、一時期クリステルとよりを戻し更に梅毒が悪化。当時の梅毒治療には水銀が用いられており、その副作用も考えられる。
    梅毒には第4期(末期)症状まで段階がある。治療せずに10年以上経つと脳神経がやられ精神神経障害が進行。ロベルトは幻覚幻聴言語障害不眠鬱病に悩まされライン川へ飛び込み自殺を図る。精神病院の療養所に収容され2年後に死亡。死後、脳の病理解剖記録も残っており梅毒の末期症状だったことは間違いがない。
    梅毒は感染後4年が経過すると性行為で相手にうつすことはほぼなくなる程感染率は低下。
    1840年に結婚したクララは13年半の間に8人の子供を出産。感染しなかった。

    14歳年上のクララを44年間プラトニックに愛し続けたブラームス。(恋愛関係になった女性は複数いたが結婚せず独身を通した)。この献身的で誠実な愛情に『無法松の一生』すら感じた。

    ロベルト・シューマンの曲には「クララ・コード」と呼ばれる二人にしか分からない暗号が忍ばせてあった。ブラームスもクララに送るメッセージのように「クララ・コード」を曲に込めた。

    残念なのはロベルト・シューマンの曲が自分には余りぴんと来ないところ。「子供の情景」シリーズは好きだが。名曲「トロイメライ」もショパンの「別れの曲」に似て聴こえてしまう。一番良かったのはブラームスの「ピアノソナタ第一番ハ長調より」と「十六のワルツ第十五番変イ長調」だった。

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    2025/12/23 21:33

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