月と牛の耳 公演情報 渡辺源四郎商店「月と牛の耳」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    真剣に遊んでた!
    最近のデスロック、多田演出作品では久々の大当たりでした。
    「渡辺源四郎商店」との合同公演ということで、元の戯曲をたっぷりと活かしつつ、多田氏が好きそうな遊びをたっぷり取り入れていて楽しかったです。

    見ていて思ったのが、最近の若手、ロロとかがやりたい事って多田氏の演出に近いのかな、と言うこと。
    古典が多い多田氏の最近の作品と違って、今回は元の戯曲が現代口語の戯曲で会話がしっかり書かれているから余計そう感じたのかもしれないです。
    今回の公演を見る限り、やはり先輩の多田氏の方がはるか先に行っている感じ。
    役者のレベルの高さもあるのかもしれないですが。

    ネタバレBOX

    当パンにも畑澤氏、多田氏が共にプロレス好きという共通点が書かれていましたが、最初にリングアナ風に導入があって、選手入場ならず役者入場があるのはプロレスと言うよりK-1や総合格闘技的でした。

    本編は、戯曲の言葉を大切にして、そこから更にイメージを広げる遊びたっぷりの演出。
    頑固な空手家の父と、娘の恋人(実際は既に結婚済み)が初めて会った時は、まるで決闘のシーンのようにお互いが距離を測って緊張感たっぷりだけど、セリフはごく普通で、手土産を渡すだけだったりとか。

    役者さんが魅力的なのは、渡辺源四郎商店と組んだ事による魅力かもしれません。
    パズルを組立てる痴呆の老人役、宮越さんが途中セリフを止めて、最初からリングアナとして舞台に居た間野さんがプロンプするのは演出なのかガチなのかどうか分からないけど、和やかに笑って済ませられる暖かい空気が舞台上に生まれていました。

    舞台上手の出ハケは病室の中、客席の階段を使った出ハケが外界との出入りを現しているのも分かりやすかったです。
    最後、カーテンコールが済んだ後も、順行性健忘症で入所している父だけは上手の出ハケから去って、他の人たちは階段を登ってハケていったのが印象的でした。

    あと、例によって夏目さんの肉体をイジめ抜く演出が楽しいです。
    はじめて恋人の父親に会った、というのを演じるシーンでは、空気椅子に座るすることでひとり汗まみれでつらそうなあたりが、爆笑だけど効果的でした。
    次男と夏目さんが組んで、悪のレントゲン技師役の畑澤さんとプロレスをするところもおかしくて、畑澤さんのヒールっぷりがプロレスしてて楽しかったです!
    客席のイスを持ち込むのはプロレスでは常套手段だけど、演劇ではなかなか見ないので斬新でした。
    撃退した後、次男が非常に頭の悪い感じにヘラヘラしながらセリフを言って外へ出て行った後、夏目さんが「ああいう若い人がいる限り、日本の将来はまだまだ安心だな」と言っていたのが、セリフと舞台上の出来事にあまりにギャップありすぎて爆笑でした。

    戯曲が良くて、それを元に最高に遊び倒していたこの作品は、戯曲でシミジミ、演出で爆笑の傑作だったので、もっと多くの人が見れると良いのにな、と感じました。

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    2010/12/06 00:48

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