ロカビリーに恋をして 公演情報 タマかけるモノ「ロカビリーに恋をして」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人や地域コミュニティの優しさ大切さ と時代/世相を描いた物語。地域愛に溢れた公演だなぁ。
    物語は、説明にある多摩市の永山駅からバスを利用した或る公団、エレベータもない5階に住む一人暮らしの老人が倒れ、病院に搬送されたがそのまま亡くなった。子供たちは、葬儀の準備を通して この街で父(登場しない)がどのような思いで過ごしていたのかを知っていく。話は1974年 子供たちがまだ小学生だった頃から始まる。

    1957年と2020年に1974年の物語が交差する音楽劇…そこに描かれているのは 亡き父と既に3年前に亡くなった母の出会い、そして2020年の今現在を交差して紡いでいく。親子関係というよりは、その時代の世相・世情を描くことによって、地域コミュニティとの関わり方(重要さ)が浮き彫りになる。子供たちが知らなかった父の一面を知り、近所の人たちに愛されていたことを知る。団塊世代の夢であった多摩ニュータウン、しかし、それから半世紀を経て 様変わりした事情や様子を垣間見せることによって、隔世の感を抱かせる。

    公演は、スラップ奏法のベースで幕が開くロカビリーナンバー。当時の衣装を着た女優陣の歌と溌溂とした踊り、それを2020年の葬儀と対比。それは活況だった頃の多摩ニュータウンと今、さらに夢や希望に溢れていた青春期と 年老いて5階まで歩くのが大変な現在、そんな充実感と寂寥感がくっきり浮かび上がる人生劇。高度成長期とコロナ禍といった社会事情も影響しているのであろうか(多摩ニュータウン編)。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、正面に正方形の出臍舞台にスタンドマイク、下手に演奏スペース。衝立を用いて 「JAZZ喫茶 エーシーズ」(1957年)と「団地の一室」(2020年)を交差して現す。団地の室内は、中央奥に和箪笥とエアコン、卓袱台、下手に仏壇が置かれている。息子の光太郎は 参列者も多くないので、費用的なことも考え 火葬式にしたいと。

    物語は1974年、光太郎と妹の照子が小学校から帰るところから始まる。光太郎が描いた母の顔の絵が 金賞になり喜んでいる兄妹。後々 分かるが、この日は父が工場長に昇進した日でもある。光太郎は母の喜ぶ顔が見たかったが、父のせいで喜びが半減した。子供心に小さな蟠り。父は母を深く愛しており、話は2人が出会った1957年へ。

    母は、集団就職で青森から上京し クリーニング店で住み込みで働いていた。そこへ近所の工場で働いていた父が 工場着を持って通い 見初めた。同じように上京し一緒に働いていた友達からロカビリーへ誘われ、JAZZ喫茶エーシーズで同郷の幼馴染 嘉門六郎と出会う。1958年2月の日劇ウェスタンカーニバルに向けてファンが推しを応援する。今も昔も変わらない光景、しかし何かと金が掛かる。そんな時、クリーニング店の社長を通じて父が結婚を申し込んだ。父は母だけを愛し続けた。

    母が3年前に亡くなり 父は一人暮らしだが、パソコン教室やボイストレーニングに通い地域社会と接点を持つよう努めた。そして近々 カラオケ大会に出場する予定だった。父の祭壇がなく、焼香にも事欠き寂しさが募る近所の人たち。独居老人の孤独死が言われる昨今、それでも逞しく生きようとする父の姿が目に浮かぶようだ。光太郎と照子は、早々に帰ることにしていたが、この部屋に泊まり父を偲ぶことにした。ベランダに出れば夜空に満天の星が輝いている。

    1957年、女優陣は当時の衣装で歌い溌溂と踊る、六郎はリーゼント・スタイルにし雰囲気を漂わす。公演の目玉である歌と踊りは楽しくノリノリで会場を沸かす。ビリー諸川の歌、生演奏(ウッドベースとエレキギター)も上手い。キャストと観客が一体となって盛り上げている公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/12/07 06:48

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  • 旗揚げ公演をご観劇いただきありがとうございました。感想もありがとうございます。

    2025/12/11 13:47

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