11ぴきのネコ 公演情報 劇団テアトル・エコー「11ぴきのネコ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    飢えて飢えて風に吹き飛ばされそうな野良猫にゃん太郎(小宮孝泰氏)。二本の土管の上に落ち葉が降り積もったような空き地に辿り着く。早速土管に潜り込むとそこには先客、野良猫10匹がいてパニック。猫は髪の毛に猫耳のような盛り上がりや団子を作って表現。にゃん十一(田中英樹氏)だけが片耳だった。

    リーダー格のにゃん次(小泉聡美さん)は寺育ちの猫。眼鏡を掛けて聡明。
    にゃん蔵(杉村理加さん)は旅回り一座の猫。呼び込み口上が得意で太鼓(コンサートスネア?)も叩く。同じ一座の女形に飼われていたにゃん八(後藤敦氏)。
    にゃん四郎(黒川なつみさん)、にゃん吾(吉川亜紀子さん)は米兵に飼われていたが飼い主が病院送りに。
    にゃん六(加藤拓二氏)とにゃん七(松澤太陽氏)はヤクザの猫。松澤太陽氏はベースを持ち歩く。
    にゃん九(澤山佳小里さん)はアコーディオンを持つ。美食家?
    にゃん十(小野寺亜希子さん)はサッカーブームの折、紙袋に詰め込まれて蹴られた過去。
    にゃん十一(田中英樹氏)はドジなこそ泥に飼われていた。
    にゃん太郎の飼い主はシェイクスピア研究の学者。全てのシェイクスピアの戯曲を暗誦出来る。

    餓えた野良猫共は死を待つばかり。にゃん太郎はどうにか食い物を手に入れる算段を練る。

    小宮孝泰氏のとぼけた味が作品に似合う。マイクがかなり音を拾う会場。
    田中英樹氏はグッチ裕三と左とん平を足した感じで口上が品川祐っぽい。もう一人の主人公だろう。
    にゃん作老人として田中真弓さんが登場。

    あんさんぶるニェコーとして6人が歌に踊りに演奏に大活躍。クラリネットにヴァイオリンに手作りのカホンみたいな楽器。下手前でキーボードを演奏する後藤浩明氏。

    『七人の侍』から『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』が生まれたように、そんな系統の話だと何となく思っていたが全く違った。衝撃のラストも唐突。70年代だよなあ。
    また観たい。

    ネタバレBOX

    飢えの苦しみに耐え切れず、掘った穴に自ら生き埋めになって自殺しようとする野良猫達。にゃん太郎はにゃん作老人を連れて来る。巨大な魚の住む湖への地図を渡す老人。最後の力を振り絞って湖への旅に出る11匹。それを見送って自殺するにゃん作老人。とにかく話の底流に流れるものが重く暗い。

    にゃん太郎は皆に野良猫の良さを説く。野良猫は自由な存在、人間から独立して生きなければならない。人間の都合によって運命が左右されては堪らない。自分達で生きていけるようにならなくては。それにはまずこの空腹をどうにかしないことには誰も賛同などできない。魚が自由に取れる楽園の湖に共和国を築く。これで皆幸せになれる筈だった。

    エピローグ、十年後、初代大統領だったが二年で引きずり降ろされたにゃん太郎が夜道でこの国を嘆いている。ふと黒い影が九つ近づいて来て無言のまま棍棒でにゃん太郎を撲殺する。

    馬場のぼるの原作絵本『11ぴきのねこ』は1967年に発表。
    1969年、井上ひさしの脚色にてNHKの人形劇として『十一ぴきのネコ』放送。
    1971年、井上ひさしの戯曲により『十一ぴきのネコ』が劇団テアトル・エコーにてミュージカル化。
    1989年、戯曲を改訂し『決定版 十一ぴきのネコ』としてこまつ座で上演。ベトナム戦争など時事ネタをなくし時代を越える普遍的なものを目指した。野良猫の共和国は繁栄と引き換えに公害を撒き散らし、汚染された湖の魚を食べた猫達は次々に死んでいくラストだそうだ。
    (今回は『11ぴきのネコ』)。

    だが「エコー版」のラストの方が人気が高い。当時、全共闘等の学生運動が理想の社会を作り上げようと体制側の大人達と至る所で戦っていた。夢見る若者達の純粋なエネルギーがいざ権力を握った途端憎むべき奴等の側に豹変する人の理。どんな国を作っても権力というものそれ自体が悪なので同じこと。権力を持つことの恐ろしさは先にやらないとやられる恐怖感。撲殺されるにゃん太郎にはカリスマ性があったのだろう。早くに殺しておかないと国民が集結してくる恐怖。にゃん十一は本当の意味で野良猫であり続ける。何も持たず誰にも付かず何も求めず独り去って行く。

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    2025/12/06 20:41

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