公演情報
シアターX(カイ)「三文オペラ」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
このプログラムもシアターX主催、例の井田邦明氏演出の音楽系舞台。
三文オペラをオペラで観たのは初めて。女性も男性も高音の野太い声を音程差極大のビブラートで出すと、この作品の興趣が殺がれるような・・恐らく中盤以降、太い声で歌う場面が増えたのか、繰り返し耳にしていて許容量を超えたので耳について聞えて来たのか・・こう申すとオペラ歌手(の声で歌える方)の方には申しわけないが、先に知っていた演目であった事もあり、声質と作品のマッチングに若干ではあるが違和を感じた所である。
だがクルト・ヴァイルの曲は名曲揃いで、既にガーシュインが居たが前世紀前半のドイツでも先進的な楽曲として聴かれたのでは、と思ったりした。現代はもっと複雑な和声と旋律の絡み方のある楽曲があり、ふと林光を思い出したりした(その先駆としてあったのでは、と)。
そうか音楽畑の人々にとっても「三文オペラ」は取り組むべき範疇の作品なのだな。
しかしブレヒトという人は人間の一筋縄で行かなさを軽妙な台詞と意外な展開(人物の行動)で描いてみせる。主人公である女垂らしのメッキー、彼と対峙することとなる物乞いを牛耳って金儲けしているピーチャム、メッキーに借りがあり敬愛している警視総監のブラウン、メッキーの新妻ポーリー(ピーチャムの娘)、結婚の約束をしていた別の女、彼が出入りする娼館に居るかつてのメッキーの恋人ジェニー。それぞれの独特な行動により、メッキーは追い詰められて行く。
娼婦ジェニーはメッキーを警察に二度も「売る」のだが、その感情は明かさず、行動だけを観客は見せられる。しかし人生を最大限「遊んでいる」(勝負している)感のあるジェニーの女としての振り切れ方は、メッキーに極上のカタストロフ(破滅)を与えているようにも見えるし、それぞれ流の法外(法は二の次)に生きる人物たちの躍動が、世相を皮肉り笑っている。そこにこの作品の底知れない魅力がある事を再認識。