売春捜査官 公演情報 高円寺K'sスタジオ本館「売春捜査官」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    無料(投げ銭)公演。高円寺K'sスタジオ10周年特別企画
    脚本は同じでも、演出や役者(演技)によって面白さが違って観える。今回の「売春捜査官」は、主人公の木村伝兵衛部長刑事を木村夏子サンと柏尾志保サンが競演する。その演技が見どころ。最終日に続けて観たことによって、その違いを感じる。彼女を支える男優陣ー日下諭サン、梶原航サン、千葉大和サンーの熱演も良かった。もちろん舞台技術の照明や音楽が実に効果的に使われ、印象深く観(魅)せる。

    つかこうへい の思いは、やはり役者の演技力という体現なしでは伝わらない。特に主人公を演じた2人の力強く凛とした姿と愛嬌ある仕草、また山口アイ子の切なくも強かな女、その異なる女性像を自在に演じ分ける。
    (上演時間1時間35分 途中休憩なし)【木村夏子版】

    ネタバレBOX

    舞台セットは、お馴染みの古びた机、その上に黒電話、捜査資料、そして洋酒瓶が雑然と置かれている。音楽は冒頭の「白鳥の湖」は定番であるが、それ以降の劇中音楽は情景場面に応じて流すが、その選曲が実に良い。

    在日への人種差別の激白、その故郷を追われた慟哭が胸をしめつける。また伝兵衛の部下 梶ワタルを同性愛者として登場させ、性への偏見差別、職業・職場、さらには社会進出における男女差別、権力至上への揶揄など、色々な問題・課題を浮き彫りにしていく。今では憚られるような差別・卑猥語や隠語で捲し立て、観客によっては嫌悪感を抱くかもしれない台詞をポンポンと発する。一方、人が感じ持つ優しさ、哀しさ、孤独、気概などの人間讃歌とも受け取れるシーンの数々。

    熱海の海岸で絞殺された山口アイ子の平凡と思われた事件。その容疑者 大山金太郎を一流の殺人者に仕立て上げることによって、事件の底流にある本質を炙り出す。この硬質で骨太い描きの中に、女性ならではの純粋と情念の心情を垣間見せる。またちょっぴりあるお色気シーン、この緊張・弛緩のほど良い刺激が物語を飽きさせない。

    木村さんの伝兵衛は、小柄で華奢な体格に 黒スーツでビシッと決めたスキのない恰好。ただ 自分が観たのが楽日ということもあるのか、声が掠れており聞きにくい。聞き取れなくても関係ない、例えば 冒頭の電話口に向かって喋る台詞は、男勝りの気性の荒い女性という印象付けが出来ればよい。しかし本篇の中はしっかり聞かせてほしかった。そこが惜しい。好かったのは、衣裳が関係しているのかもしれないが、芯が強いという内面の激しさが迸っていた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/10/23 06:27

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