満足度★★★
古典的雰囲気の作品
脚本をはじめ、演出、照明、衣装など総合的に丁寧に作られた、文学的な作品で、戦争時の思惑の交錯の中に人間の弱さと強さが描かれていました。
満州国があった頃の、ある船の中が舞台で、現実的な話で始まり、次第にオンディーヌの物語に接続され、幻想的な雰囲気になり、悲劇的な結幕を迎えますが、その後に和やかな雰囲気のエピローグが続き、重くなり過ぎないようになっていました。
独白やト書き(役者が自身が読み上げます)、レトリカルな言い回しを多用する文体がシェイクスピアを思わせました。
神田晋一郎さんのピアノ演奏は叙情的で、時折入るアヴァンギャルドなパッセージが良いアクセントになっていて美しかったです。
女優の皆さんの歌もなかなか上手でした。
バランス良く仕上がっていたのですが、話のテンポが緩やかで、演技も今一つ突き抜けたものを感じることが出来ませんでした。キャストもスタッフも実力のある方々だと思いますので、この劇団ならではの個性を打ち出して欲しいと思いました。