満足度★★★★
イキウメらしい作品。メイン料理は見た目と違って意外と重い。
毎回欠かさず観ているイキウメの新作は、短編集の第3弾。
今回は食の連鎖に関する話。
短編4本から構成されており、当日配布のパンフレットでは、
料理のフルコースに例えられていて、重みのバランスと
長さが、まさにそれに比例しているよう。
#1”前菜”人の為に装うことで、誰が不幸になるっていうんだ?
料理学校に通っているベジタリアンの妻は、
夫にも同じくそうなってほしい。
そして、選んだ方法は…。
やっぱり「やってはいけないこと」「譲れないこと」
ってありますよね。
#2”魚料理”いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ
必要なものしか盗らないというポリシーを持つ、
万引きのプロである男は、懸賞マニアの女の部屋に
転がり込んで共同生活を始めていた。
ある日を堺に、遊び半分で棚ごと盗む万引き犯が出没し、
近所のスーパーは閉店の危機に。
行きつけの店が無くなってしまっては元も子もない。
彼は、地域の万引同業者と協力して、対策を立てるが…。
ポリシーはあっても犯罪は犯罪です。
懸賞マニアは犯罪ではないので、同類に扱えませんよね。
懸賞マニア役の加茂杏子さんが普通でありながら、
いい味出してました。
こういう理屈っぽい役をやらせたら、
安井順平さんがダントツのうまさです。
冷たいようでいて、実は優しいところがとってもイイ。
安井さんは、毎回出ているような気がしますが、
劇団員じゃないんですね。
一方、森下創さんは、万引きグループの親玉とか、
#3の食を追及する師匠?とかが合いますねぇ。
教祖とか、仙人ぽいと言うか。
#3”肉料理”人生という、死に至る病に効果あり
食を研究していた男は、”飲血”が長寿をもたらす
ことを発見、続けるうちに見る見る若返るが、
もう普通の食事はできなくなっていた。
また、皮膚が太陽光線に弱いことがわかったため、
昼は外出せず、夜間だけ行動するようになり、
周囲の目からも隠れるようになった。
その有様はまるで「吸血鬼」のようだった。
切り口は「100歳以上の老人の所在不明」問題。
ある男が語る一代記を歴史を追って再現していく様子から、
うねるような人生の流れのようなものが見えて圧巻です。
飲血と「吸血鬼」の設定が表裏になっているのも上手い。
「吸血鬼」一族が増えていくのではないかといった
不安も垣間見えて、ゾッとする。恐ろしい。
#4”デザート”マヨネーズの別名は、全体主義的調味料
菜食の料理研究家とその助手は、
テレビの料理番組に出演する。
デザートはエピローグのようなものですね。
次回は、ついに「散歩する侵略者」が観れる!!