海と日傘 公演情報 天戸日和「海と日傘」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    静かで確かな演技力
    「素晴らしい!」のひとこと。夫婦の心の機微を綴った物語だったが全てのキャストの演技力がオニ素晴らしい!まったく欠点の無い舞台でした。観られて幸せ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    佐伯夫婦の夫は教師をしていたが退職が決まり小説家一本で今を凌いでいるが家賃は滞り経済的に厳しい。妻は余命3ヶ月と診断され、妻には内緒にしているものの、妻は自分の命の期限を既に知ってるようだった。夫は元編集担当者の女性・多田と関係があったが、これも黙ってはいるが妻は知っている。

    現在の夫の編集担当者・吉岡は二人の過去の関係も熟知し、時折、佐伯に多田の現況を報告しながら、何かと佐伯の相談にのってきた。

    妻は夫の秘め事を知りながら静かに我慢をし素知らぬ風を決め込むが心は穏やかではない。妻は燃えるような感情を自ら押し隠した分、転勤となった多田が佐伯家に挨拶に来ると、一気に妻の感情は噴出し湯のみを落として震えてしまう。夫の腕を掴み、その腕を放さない激情は「ねぇ、(うちが死んでも)うちんこと忘れたらいけんでよ・・。」と吐くが、そのセリフは夫の心にズシリ!と、まるで大きな杭を打ち込んだようなせき止め方だ。

    こうして何事もなかった様に妻は亡くなったが縁側の外でははらはらと細雪が舞い落ちる。サラサラ・・サラサラ・・・

    一人で食事をしながら夫は「おい、雪が降ってきたぞ。」とひとりごちる。不貞をはたらきながらも妻という大きな存在は夫の中で今も生きているのだ。人は死んだからといっても、そこで終わるわけではない。夫の中でいき続けている妻は今頃、虹の上を歩いているのだ。

    物語はけっして大げさな描写や爆弾はない。人が生きとし生ける心理を描写した物語だ。しかしズン!と心に響く繊細で美しい物語だ。

    佐伯夫婦の近隣に住む大家の瀬戸山夫婦の関係性も素敵だ。下町の人情味溢れる情景をまんま引き受けたかのような夫婦だ。瀬戸山剛史を演じた佐藤誓の表情のみの演技が絶妙だった。とても素晴らしい。

    演出、導入音楽、構成、どれも素敵だ。次回も観たいと心から思う。全員に拍手!

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    2010/11/10 17:04

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