ラルスコット・ギグの動物園 公演情報 おぼんろ「ラルスコット・ギグの動物園」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    いつにもまして ファンタジー色が濃い寓話劇。
    前作は、舞台と客席の境がない おぼんろ らしい公演だったが、本作は客席から観る一般的なものへ それが少し残念。

    物語は時代設定を曖昧にし、時代に囚われず大切にしなければならないコトを訴える。それを動物の視点から描くことによって、生きているのは人間だけではないことを強調する。そこに おぼんろ らしい人間社会への皮肉や批判が浮き上がる。今回は生命や平和といった 言葉では明確だが それを表現することは難しい。その本質的なところを突いている。

    また 照明や音響/音楽といった舞台技術が、いつにもまして効果的。そう思わせるのは、情景に応じて中央の舞台装置が回転し、同じ造作にも関わらず多方面からの照明によって違う印象をもたらすため。
    (上演時間2時間 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    中央に回転する櫓状の建物、上手・下手に形や大きさが違う別空間。奥の壁際は紅色の幕。側壁に飾り電球があり、中央の櫓の上には幾つかのランプ。全体は遥遠で幻想的な雰囲気が漂っている。

    物語は、紛争・戦争が起こり、ラルスコット・ギグの動物園が戦禍に巻き込まれようとした時、一匹の獣が 開園された時の経緯を語るところから始まる。この地は 猛獣を恐れ、管理と秩序に支配された都市 チノイ。その周りは果てしない荒れ地 ラガキナ。動物たちを引き連れ旅をする青年ギグ、彼は唯一人の親友ラルスコットと共に「人間」として認められる日を夢見ている。或る日、金色の蛇が現れ「命(獣)を連れ、街で見世物にするのだ」と囁く。ギグは動物たちを説得し都市へと旅立つ。動物たちは、現実主義のバク、気弱なクマ、レッサーパンダを装う承認欲求の強いタヌキ、黙ってついてくるボロ犬。ギグは仲間を騙し残虐なショーで人気を博していく。移動動物園ではなく、この地の動物園として定住。そして「名誉市民の称号」を手に入れるが…。一方、魂を喰らうという〈大鴉〉の影もちらほら…。

    「生命」と「平和」といった大きなテーマを描いているが、それを動物(獣)の淡々とした生き方の中に落とし込んでいる。そして動物たちの性格等を人間に準えることで、人間そのものを客観的に捉える。ラルスコットは 既に疫病で亡くなっており、ギグは心の中に幻影を抱いている。彼のことを忘れなければ心の中で生き続ける。しかし そこからは動けない。一方 忘れることは、想いとの決別で苦しいが 新たな歩みが出来る。そのジレンマが狂おしいほどに伝わる。そして動物たちを巻き込んでの戦争、いつの間にか人間ではなく獣が兵力として戦場に送り込まれる不条理。

    今回は生歌が多く、ミュージカルのような印象もある。それがファンタジー色を濃くしている一因だ。物語性は勿論、観(魅)せる演出も回転舞台を用いることで効果的にしている。メイクや衣裳は寓話性を引き立て共感と感動を呼ぶ。やはり おぼんろ 公演はエンターテインメントに優れている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/09/18 21:11

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