満足度★★★★
泣き虫パワーポップ
ベタにもほどがある!
ってくらいわかりやすく丁寧な作品。
おそらく賢ければ小学生でも楽しめるし、
健常なら70歳だって守備範囲だった。
誰にでも楽しめる味付けで、
流れるように時間が過ぎた。
説明的な台詞や、俗に言う「芝居の嘘」のクドさが
気にならないのは何故だろうか?
(キャラメルボックスだったらすごい気になるのに)
そこは、演出家のバランス感覚の良さであろう。
「添加物使ってますが、美味しくするためですよ。
出来うる限り量は抑えてるし、素材の旨味を大事にしてます。」
という姿勢が透けて見えた。
だから、きっと観劇初心者から玄人まで納得いっただろう。
すごいことだ。
もう少し謎を残して、余白をつくったほうが
ゲージュツとして観客が参加する余地ができると思ったので
敢えて☆は4つにしておきます。
しっかし、そのままテレビドラマにできそうな明快さだったなぁ。
しかも、トリックにも人情にも偏ってないニュートラルな作風。
あ、さんざんキャッチーだの守備範囲が広いだの書いちゃったけど
決してセルアウトだとは思わなかった。
肝心のところは演劇の旨味を活かした
鮮やかな演出手腕でグッときた。
ラストシーン近く、登場人物達がそのまま
少年時代に遡って過去に起きた事故の様子が再現される場面だ。
目の前の人間がフェイドインで少年少女になっていくのは、
それまでの時系列に沿った物語の流れからすると
えらいドラスティックな変化で難しかろうが、
そこに持っていくまでの出演者全員のグルーヴが自然で
観ていて抵抗なく乗っかることができた。
そして、事故が起きる瞬間の緊張感とダイナミズムは
ちょっと80年代・90年代の小劇場ブームの香りがして興奮した。
若い劇団なのに、かつての離風霊船や南河内万歳一座の
カッコのつけ方を見せて幕を閉じやがった。
熱い!
(まあ、俺の偏見だけども)
スタイリッシュで知的で平熱な作品が跋扈しているような印象が
勝手にしている近年の東京の小劇場シーンにおいて、
ちょっと甘酸っぱくて暑苦しくてベタなことを
ここまで丁寧にやってくれると嬉しくなる。
もっと需要はあるはずである。
さらにドカーンと売れて欲しい。
中高生とかにも人気がでそうだ。
多くの人に観て欲しい。