どうじょう 公演情報 コマツ企画「どうじょう」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    くっきりと深く
    男も女も
    その内に抱えたものが
    くっきりと伝わってきます。

    作り手の、一気に表皮を剥いでみせるような
    人間描写に瞠目、
    そこからのさらなる広がりにも
    稀にみるおもしろさがありました。

    ネタバレBOX

    先月に続いての2カ月連続公演、
    今回の作品にも懐深い人間描写がありました。
    前回とは異なる切り口から
    人間のコアにある想いが鮮やかに浮かび上がっていく。

    特に今回の作品には
    まるでCTスキャンのごとく皮膚の内側をみせるような、
    人間の本音を描き出す仕掛けがあって・・・。
    男女紹介業の建前のなかで
    そこを訪れる男女の
    あからさまな本音がもろに引き出されていきます。

    まずは
    そこにたむろする常連男性たちそれぞれの
    本音の隠し方というか
    建前の取り繕い方が
    ある種の哀愁を感じるほどに
    おかしい。
    昔々、下世話なキャバレーに、
    「紳士の社交場」なんていうフレーズがついていたことがありましたが、
    それに近い感覚があって
    それぞれの薄っぺらな表皮の纏い方が
    かえって、個々が持つ男たちがもつ本音の匂いを
    おもいきり醸し出していく。

    その本音の漏れだし方も
    一層ではなく
    本人たちが隠し持っている劣情にくわえて
    さらにその奥にある
    キャラクター自身が気づいていないような
    深層心理までも浮かび上がらせていくのです。

    女性たちの描写には
    男性とは違う肌触りがあって
    内面の伝わり方も男性ほどあからさまではない。
    その男女の温度差が
    しなやかにほの悲しく、
    でもどうしようもなく可笑しい。
    その一方、やがて剥ぎ出されていく
    女性たちの纏うものと本音、
    さらにその奥に抱えたものには
    男性とは異なる屈折や凌駕するような深さがあって、
    目を奪われる。
    紹介所だけではく、
    上手におかれた外のスペース設定での
    さまざまな雰囲気や
    取り繕いきれないキャラクターたちの想いが
    観る側を深く取り込んでいきます。

    紹介所のスタッフたちも絶品の出来で、
    しっかりとした個性を持って
    舞台全体に冷徹な視座を作り
    訪れる人々の個性を強調していく。
    そこまでに作りこまれているから、
    客席から登場する最後の女性(主宰)がやがて導く
    うそっぽいというか確信犯的な高揚にも
    グルーブ感すら生まれ
    がっつりと掴まれてしまう。
    舞台の範囲というか演劇の枠を
    崩壊させて溢れ出してくるものに
    あけすけさや可笑しさの重なりを踏み越えた
    さらなる質感があって、
    息を呑む。

    正直なところ
    崇高でも高尚でも全くないのですが、
    この舞台だからこそ感じられる
    昇華してしまったような、抜きようのない
    人間臭さがあって。
    それが臭覚だけではなく
    個々のシーンの温度として
    しっかりと伝わってくる感じ。

    この感じ、かなりすごい。

    しかも、そこまでの突抜けがありながら
    遊び心が随所に光る。
    たとえば、
    イルカを食べる話の不思議な説得力。
    あるいは、
    場ごとにあらわれる
    気の弱そうなやくざさんなども、
    絶品。
    贅沢な役者の使い方なのですが、
    そのキャラクターだけでも十二分に可笑しい上に
    物語のコアに入って行けないキャラクターだからこその、
    男女の劣情のエッジを際立たせる力もあって。

    正直なところ観終わってしばし呆然。
    作り手の
    幾重にも重なった表現力に舌を巻きました。
    掛け値なしにおもしろかったです。

    ☆☆☆◎◎★△△





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    2010/10/29 06:35

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