公演情報
宝宝(bǎo・bǎo)「みどりの栞、挟んでおく」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
子どもが寝たらやろうと思ってたこと、話そうと思っていたこと、聞こうと思っていたこと...そうしてそれらをできないまま時が過ぎてしまうこと。
子育てってまさに、流れてく時間に栞を挟んでそのまま忘れちゃうことの連続だから、「挟んでおく」って言ってくれる人、そのことを一緒に思い出してくれる人に救われてばかりの12年だったってことに改めて気づいた。
気づかされる演劇だった。それと同時にその人が私にそうしてくれたことを私はその人にしていただろうか、ということも考えさせられる演劇だった。
圧倒的にちがうあなたとわたしが「互いにできるだけ傷つかずに一緒にいるためにしているはずのこと」が、少しずつあなたからわたしを、わたしからあなたを遠ざけてしまう。挟んでいたはずの栞はパラパラと落ちて、何を読んでいたのか、どこを読めばいいのかわからなくなる。
でもこの作品は、「もう一回一緒に読めばいい」を信じようとしていた。他者と生きることを自分なりのやり方で諦めない、不器用で懸命な人々の姿がそこにあった。
「出産や育児によって"失われる自分"がある」ということ、そして「子どもから離れてひとりになりたい」ということをはっきり言ってくれたことにも私は本当に救われた。12年ずっとこのことばかり考えている。
「子育てに没頭できず自分を優先してしまう罪悪感」と「子どもを産んだだけで私は私でしかないという祈り」の挟み撃ちで引き裂かれそうになる時「それでもやっぱり子どもが大事」という結末や感触をしばしば物語やドラマは用意したがる。最低のままでいさせてもらえない不自由と、最低じゃないよと誰かに言ってほしい切実の狭間で何度途方に暮れただろう。
だから、そのどちらでもない、そしてどちらにもとれる「いいじゃん」を聞いた時涙が止まらなかった。
「いいじゃん」も栞だった。私が私を適当に読み終わらないための栞だった。
そして、どこからでも「あなたのことが大好き」ってことから始めるための栞だった。
余談。かなた書店の選書と私の本棚の本の並びがあまりに似ていて他人には思えなかった!遠目でざっと数えただけで20は同じ本があった(笑)そして私はそのことがすごく嬉しかった。私も必ずあの本屋に行くだろう。きっとあの場にいるだろう。そう思える時間と空間、それから人々だった。
あともうひとつ。これは何度でも言わせて下さい。
「セルフ託児ありがと割」をありがとう。ずっと欲しかった言葉でした。そのことに気づかせてくれました。誰かの生活や支度を見つめる試みはやっぱりこの演劇そのものの魅力に通じていました。