せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学 自主上演実習公演 公演情報 桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻「せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学 自主上演実習公演」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    今年も依頼により、桐朋学園芸術短期大学専攻科演劇専攻57期の公演を観劇。今年は、3日間のうち1日(3公演)のみ観た。原作よりコンパクトにテキレジしているだろうが、どの作品も充実(テーマを明確に)しており楽しめた。

    なお、教員の監修のもと、学生が自ら作品を選び 上演する。学士「芸術学(演劇)」取得の審査対象になり、上演作品の映像を独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に提出することになっているため、★評価はしない。  

    観たのは、次の3作品(上演順)。また「観てきた」コメントは、まとめて記載する。
    ●「ダウト~疑いをめぐる寓話~」(作:ジョン・パトリック・シャンリー、翻訳:小川絵梨子)
    ●「この道はいつか来た道」(作:別役実)
    ●「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」(作:つかこうへい)

    ネタバレBOX

    舞台美術は演目によって異なる。

    ●「ダウト~疑いをめぐる寓話~」(70分)
    舞台は、アメリカ ブロンクスにあるカトリック系の教会学校 セント・ニコラス・スクールの校長室。上手に ぶら下がり健康器にカーテンを取り付け ドアに見立てる。下手は校長 シスター・アロイシスの机。

    シスター・アロイシスはフリン神父が小児性愛者で性加害 行為をしていると疑っている。対象者は校内唯一の黒人生徒ドナルド・ミラーである(人種差別問題が見え隠れする)。そこで新任(担任)教師のシスター・ジェームスに神父の監視を命じる。室内で男女二人っきりになってはいけない、シスターは直接 神父に話しかけてはいけない等、いくつもの制約がある。

    神父はドナルドに親身になって接しているが、その度が過ぎているとシスターは思っている。それ以外にも疑わしき行いが…。シスターは<正義>を振りかざし神父を追い詰めるが、疑惑は解明できない。真相は藪の中のまま 神父は他校へ転任するが、それは栄転。シスターと神父の息詰まる会話が見どころ。

    ●「この道はいつか来た道」(60分)
    とある道に電柱が1本と、その前にポリバケツがあるだけ。
    他の劇団でも観たことがあるが、ほぼ同じような舞台装置(別役 作品=電柱?)。

    物語は女2人が出逢い、互いに名前や素性がわからないまま、色々な出来事を語り合う。他の劇団で観たときは男女2人…身なり、様子からホームレスらしい。繰り返される取り止めのない会話、しかしラスト近くなって話は思わぬ方向へ。2人はホスピスを抜け出してきた末期癌患者。そして2人は偶然知り合い、愛し合い結婚するという演技を繰り返している。つまり「いつか来た道」。

    ラスト、寄り添うように死を迎えようとする2人。アカシアの花が咲く初夏を待ち侘びるが…。お互いの痛みを確かめ合うことは出来ないが 凍死するのは確実であろう。寒く冷たい死の実感がそこはかとなく漂う。が、何故か自分はあくまで明るく楽しく人生を生きる、といった前向きな姿に思えてしまう不思議な余韻。

    ●「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」(75分)
    この演目では、初めて観る舞台装置、演出であり興味深かった。中央に大きな机、下手に水野トモコの小さな(スチール)机。そして三方(客席方向以外)を3段のkeep outで囲う。まるでリングのようで、捜査室という格闘場を思わせる。まさに生死をかけた戦いが始まる。犯人の大山金太郎以外は女性の配役。木村伝兵衛≒伝兵衛コ、レズという設定。上演前に、差別用語等が飛び交うが、原作の世界観を損なわないため そのまま使用すると アナウンスあり。

    元オリンピック棒高跳び日本代表 伝兵衛コが、熱海で女子砲丸投げの選手が殺された事件を担当。同時に木村の恋人がモンテカルロで自動車事故死した真相の解明も…。オリンピックの正選手と補欠選手(蔑称:男はゴミ、女はコケ)にみる差別、同性愛への偏見、そして金銭と名誉などの欲望を抉り出す。

    冒頭 伝兵衛コが「白鳥の湖」の音楽に合わせ(バレエを)踊りながら登場。歌ありダンスありといった観(魅)せる、そのエンターテインメント性に会場が沸く。それにしても、伝兵衛コ と速水ケイコが 大山金太郎の後ろ股下から腕を伸ばし、競技に準えて<棒>か<玉>か なんて言いながら股間を握るのを 初めて観た。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/07/14 07:50

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