黒塚 雪女 時次ぐる神の花嫁 公演情報 演者集団 剣舞「黒塚 雪女 時次ぐる神の花嫁」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    タイトルから3つの物語を順々に紡ぐが、少し解り難い。2019年に「黒塚」、2022年に「雪女」を上演し、本作は その2作品を含み「時次ぐる神の花嫁」を制作している。最後になって ようやく物語の全体像が明らかになる構成だ。観客の関心を掴むためには、物語毎に順々と展開するのではなく、それぞれの内容を交差もしくは交錯するなど、少し工夫が必要だと思われた。

    とは言え、それぞれ単独作品としては面白い。少しネタバレするが、「黒塚」は能の「安達ケ原」を元に、「雪女」は小泉八雲の作を元に創作している。そして「時次ぐる神の花嫁」では2つの話を絡め、”時の旅人”の物語として描いている。公演の魅力は妖しい世界観、それをシンプルな舞台美術と役者陣の演技で観(魅)せるところ。

    演者集団 剣舞 の公演は初めて観たが、出演者の多くは時代絵巻 AsHで観たことがある役者。特にヒロインの羽衣堂愛彩さん(主宰であり脚本・演出の場合は、灰衣堂と名乗っているよう)の演技は あまり観ることがないので良かった。なお、この作品でも殺陣シーンがあったが、舞台スペースが関係しているのだろうか、あまり迫真・緊迫感が感じられなかったのが残念。
    (上演時間2時間10分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、素舞台に近く 中央奥に大きな生け花のオブジェ、上手/下手にススキ。上手に琴奏者(演奏は情緒があって良かった)。

    冒頭、織田信長が明智光秀に攻められ、その後 光秀が追われ山中へ、さらに源義経と弁慶へ人物が変わり山奥の廃屋へ辿り着く。日が暮れ、この廃屋に住む女 黒蜜に一夜の宿を求める。黒蜜は、奥の部屋を絶対に見ないように言い残して薪を取りに出かける。人は見ないでほしいと言われれば、逆に好奇心にかられ 言いつけを破り、奥の部屋を覗く。そこには無数の死骸。戻った黒蜜は、部屋を覗いたことを知り、鬼婆の姿を現す。なんとか念仏を唱え 鬼婆を退治する。

    次に、猟師の巳之吉と茂作は、吹雪の夜に小屋で一夜を過ごす。そこへ現れた雪女は、茂作を凍死させ、巳之吉には「このことを誰にも話してはならない」と。数年後、巳之吉は美しい女性 お雪と出会い結婚する。お雪は子供を産み、美しいままの姿で皆から慕われる良妻。ある日 巳之吉は、お雪に雪女との出会いを話してしまう。とたん、お雪は自分が雪女であることを明かし、「子供たちを大切にしなかったら・・」と言い残し 消えてしまう。

    目まぐるしく変わる登場人物、時空を超越した 運命の巡り合わせ、そして妖しい雰囲気の世界観に浸る。時の旅人は追ってから逃れ、人里離れた山奥へ、先の2つの物語と交錯するような展開。けして覗いてはならない部屋(固定観念か?)、そして1つの約束事 それは「人の生死に関わることをしてはならない」と。タイムパラドックスを意味するような言葉。約束事を守りつつ、終わりが訪れた時、違う景色が…結末の違う物語があるのかも。冒頭 信長の遺体が本能寺で見つからなかった謎、義経の北行伝説ー蝦夷地、満州を経由してモンゴルへ渡った伝説、そんな俗説を通説と対比させ 幻想的に描いた作品。

    なお、殺陣に迫力がないのは、(広い)会場スペースを全て使っているため、スピードや間合いが間延びして観えたこと。廃屋という或る空間(区切って)の中で行ったら違った印象になるかも。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/07/13 00:37

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