ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所 公演情報 遊園地再生事業団「ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    そうか、これは睡眠障害だったのか
    と、いうのは極々個人的な感想。

    舞台で行われていたのは、「ネムリへの旅」。
    夢なのか、まどろみなのか、起きているのか、混沌の中に入り込んでいく。

    ネタバレBOX

    爆音から始まるものの、劇中で流れる音楽は、環境音楽のごとく、ゆるやかなもの。
    それは、まるで眠りに誘うよう。

    「眠ることができない」男たちが「取材」をするという形式で、物語は進行する。
    舞台は、「ネムリへの旅」でもある。

    「寝る」「眠る」こととは一体どんなことなのだろうという素朴な疑問を「眠ることができる人」「寝ている人」に問い掛ける。
    その疑問は、「眠ることができなくなってしまった」ことが高じてしまったことに端を発する。

    例えば、長い昼寝をしてしまったり、頭は疲れているのに身体がそのレベルに達していないことで起こる「不眠」のときには、いろいろなことが布団の中で頭をよぎる。
    それが病のレベルまで達してしまったときには、「そもそも[眠る]ということとはなんぞや」にまで及んでしまう。

    そこに達した男たちは、ひたすら「眠り」について追い求める。
    「世界でいちばん眠い場所」とは? と。

    しかし、それは、寝つけないときに、まるで手品でシルクハットから次々と万国旗が出てくるように、記憶を次々とたぐりよせるような感じとなり、記憶の前後も曖昧であやふやになってくる。
    劇中では「chapter」の順番が曖昧になっている。

    彼らの「取材」はビデオによって行われており、それが舞台の大画面に映し出される。
    しかし、それは画像になった途端に、答えから遠ざかっていまうこともあり得る。タイムラグで表現されたりもする。

    眠ることのできない男たちの目から見えている世界は、取材される側の世界との隔たりがある。

    「眠る」という行為がその2つを薄いベールで隔てているのだ。

    いつも眠っている男が言うシェイクスピアの引用のような台詞。「オレ起きているよね、寝ている? それとも死んでいるのか?」。

    夢なのか、起きているのか、死んでいるのか、誰が? 誰と誰が? 次第に混沌としてくる。薄いベールで隔てられていたように見えていたのだが、そのベールのどちら側に誰がいるのかも判然としなくなってくる。答えを本当に求めているのかどうかも不明になる。
    まるで、まどろみの中のよう。

    誰も「起きて」とは言ってくれない。永遠のまどろみ。
    外に向かっているのではなく、内に向かっていく
    それは、パンフレットの写真にあるように、森の中へと手探りで進む姿である。


    映像の使い方が巧みで、重なるchapterが、ストーリー的なものを浮かび上がらせていく構造になっているわけではなく、ひたすら、ベールを重ねていく。
    それによって得るモノと失うモノがあると思うのだが、あえてこの方法を選び、それをすっきりとした形にして見せてくれた手腕には驚かされた
    全編、豊かなイマジネーションが溢れ出していた。まるで遊びのように。

    個人的なことだが、パンフによると宮沢章夫さんは、睡眠障害だと言う。それって、今の私とまったく同じ症状だ。てっきり加齢によるものかと思っていたのだが、ええ! これって睡眠障害だったのか! と少し驚く。

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    2010/10/20 07:19

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