絵本町のオバケ屋敷 〜愛!いつまでも残るの怪!〜 公演情報 優しい劇団「絵本町のオバケ屋敷 〜愛!いつまでも残るの怪!〜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「いま・ここ」で生まれる出来事を、そのまま一つの作品として提示しようとする、ある意味では非常に無防備で、そして挑発的な企画

    ネタバレBOX

    当然ながら、準備された完成品を見せるというより、その場で何が起こるか分からないこと自体が“見せ物”となる構造である以上、一定の混乱や、物語としての密度の不均衡は避けられません。また、オムニバス形式の構成は、各エピソードの色彩を豊かに見せる一方で、全体の流れとしてはやや散漫な印象を残しました。幽霊たちのエピソードはどれも魅力的で、それぞれに演者の技量と個性がにじみ出ていましたが、中心となるドラマの軸を追いかけると、観客の感情が深く流れ込む場所が限定的だったようにも思います。

    ただ、そうした構造的な“粗さ”を単なる未完成として切り捨てることもまた難しく、むしろその荒削りなフォルムが、俳優たちの肉声や身体、あるいはスタッフの存在感すらも、舞台上の一要素として等価に立ち上がらせていた点はやはり興味深く、ブルートゥースで再生される音楽や、手で持ち運ばれる照明という、いわば“段取りの可視化”そのものが、舞台の外縁をかたちづくる演出として働いていたことは確かです。

    また、この作品の真価は、完成度や技巧に求められるものでもありません。
    むしろ、予測不能な展開と、劇場全体を巻き込む“やってみなければ分からない”という共犯的な空気が、ある種の熱をもたらします。観客の声出しや、全編撮影OKという自由な環境も、舞台をどこか二度と戻れない「一度きり」の場として輝かせていたように思います。

    だからこそ、もう一歩、その“過剰な偶然性”をどう制御するのか、あるいは、どこまで制御しないまま魅力に昇華させるのか、といった編集感覚が加われば、この企画はより強度のある枠組みへと成長するのではないでしょうか。観客と舞台がともに揺れ動く時間として、その揺れのなかに何が残り得るのかを問うという点において、今年のCoRich舞台芸術まつり!でも印象的な作品でした。

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    2025/06/21 21:11

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