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牧神の星
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公演情報
劇団UZ「
牧神の星
」の観てきた!クチコミとコメント
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曽根千智(10)
実演鑑賞
満足度
★★★★
近戦争状態の現代を緊密に繋ぐ、虚実入り混じる戦争劇
ネタバレBOX
アトリエhacoのこけら落とし公演として行われた本作は、虚実入り混じる戦争劇。戦後、敗戦を認められない陸軍将校たちが国体護持を全国に伝えるため、反乱軍となって通信施設に押し入る。通信施設で交換手、通信技師として働いていた彼女たちは反乱に巻き込まれていく。という大筋の中に、本作を戸惑いながら稽古を重ね作っていく劇団員の悲喜交々のエピソードが劇中劇として挿入される。
このような虚実の混ぜ方は作劇法として確立しているが、劇団内の内輪ノリに終始してしまい見づらいことも多い。劇団UZも現実部分のテンポ感にもう少し緩急があるといいと思ったが、虚実の混ぜ方が多様かつ滑らかで、第二次世界大戦、現代に今まさに起きている戦争、また仮想空間内での近戦争状態(SNS内でのレイシズム、ナチュラルに日常に入り込んでくる優生思想、過激で過剰なインフルエンサー)の往還がとても緊密に描かれていた。愛媛の丘の上での上演を鑑賞するという私にとっての非日常相まって、終演後に眩しい日が差し込む様子に「みな、今を選んで生きていくのだ」とはっとさせられた。
正確に思い出せず恐縮なのだが、「自分がどうでもいいと思ってる時間の使い方が、まさに今の自分を形作っていく」という趣旨の台詞が印象的だった。忙しなく生活していると、ちょっとした休みについだらだらと動画やSNSを見てしまうことがあるが、そうした時間が知らぬ間に戦争の片棒を担ぐことがある。劇場はそんな自分を離れて、どうでもよくない時間を意識的に過ごす場であり、それを改めて思い直す鑑賞後感だった。
劇場前の(野外)ロビーにコーヒーやカレーを提供するキッチンカーが招かれ、開演前・開園後にのんびり過ごす来場者の姿を見て、こんなふうに身体を他者に開いて時間を共有するのが劇場の役割だったのだ、と改めて思い、にんまり嬉しい気持ちになった。
(以下、ゆるいつぶやき)
東京の小劇場だと、劇団主宰がプロデューサー(助成金獲得とキャスティング)と演出(だけではなく作劇責任)のすべてを兼ねている場合が多く、力が一点集中しやすいために、人間関係が難しかったり主宰を長期に渡り続けていくのに疲弊したりするのだが、『牧神の星』では主宰を思い切りなじる俳優の描写がクリアに描かれており、地方で活動する劇団はその意味では力の分散が上手く、いい意味で持ちつ持たれつなのだと、虚構入り混じる演目を見ながら思いました。その張り巡らされた個々の人間関係への眼差しが今回の演目を下支えをしているように感じました。責任がうまく分散していて、体力のある劇団っていいなあ。
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2025/06/17 17:40
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