wowの熱 公演情報 南極「 wowの熱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    WOWの熱、舞台の熱、客席の熱、公演の熱。すべてが熱かった。

    思い返せば、小劇場というものに出会った数十年前、こんな熱気の虜になった。
    現実とフィクションが入り乱れ、個が強くありながらも集団でしか行けない場所へ。「劇団」というものの成せる熱狂が、劇場の外にも充満していた。

    ネタバレBOX

    物語は、南極の劇団/劇団員と、劇中の演劇とが重なり、さらにそこで上演される作品、そして作品のなかの登場人物の……とメタフィクションの構造になっています。その構造が仕組化されていくまでの前半は演劇としては冗長にも感じられましたが、よく練られていて楽しみました。
    しっかりと組み立てられている一方で、後半、勢いと情緒的なカタルシスで押し進められるように感じられるきらいもありました。俳優個々のパワーが強いからこそよけいに、粗くともその荒波に飲み込まれていく……この力技が爆発力を持たらしてもいるのですが、もうすこし「その展開なぜ?」という部分を緻密に組みたてていられれば、安心してのめりこめるだけでなく、観劇の興奮についての曖昧さが減りより深く確実に刻まれる体験となったように思います。けれども、少なからず客席からも舞台上にむけて熱風が送られており、ともにこの公演をさらなる高みへと昇らせていました。その劇団としての総合力はなにものにも代えられません。
    その熱気は上演だけにとどまらず、公演最終日にかけては、当日券を求める人たちが集まっていたようです。客席には観劇がほぼ初めてだろう人も見受けられ、「期待感」という空気もまた熱気となっているように感じました。

    俳優の名前と役名が重なるなどの構成もあり、作品単体を観るというよりも、劇団「南極」の第7回本公演として観ることでまた違った魅力を感じる公演だとも思います。同時代を生き、リアルタイムの生身に触れ、ともに日々を進んでいく。そんな劇団公演の魅力が詰まった舞台です。
    ワオ/端栞里が演劇に出会ったように、南極の劇団員がここに集っているように。それが思わぬ出会いだったにも関わらず、鮮明に記憶され、気づけば人生を変えてしまうことがある。そんなことを思い出し、端栞里(※役名)の語りに導かれ自分の人生を旅する瞬間もありました。メタフィクションの構造にすることによって、役に共鳴するだけでなく、役者や劇団に共鳴した人もいたかもしれない。作品だけでなく、劇団として観客に突進してくるような今作には「よし、南極という船に乗ろう」と思わせる力強さがあります。

    作品からすこし話がそれますが、ときに劇団公演には、作品における俳優のポジションやキャラクターが固定化していくことによる楽しみがあります。今後、ポジションやキャラクターを強化していくのか、それとも変化させていくのかで、楽しみ方が多少なり変わるかもしれません。南極がどういう選択をし、どこへ向かうのか。それすらも共に時間を過ごし楽しみを味える、今の小劇場における海賊船のような存在の行く末にわくわくします。

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    2025/06/05 07:31

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