絶滅のトリ 公演情報 ONEOR8「絶滅のトリ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    籠の鳥は楽なのか
    「楽」な仕事であるはずの、研究施設での人間関係を描く。
    彼らの「居場所」はどこなのか、そして、それか安全で安心な場所なのか。
    さらに、いつまでもその場所はそこにあるのか。

    ネタバレBOX

    絶滅危惧種のトリを無人島で繁殖させるための研究施設。
    研究施設で生活する人々は、まるで籠の鳥のような様子だ。
    籠の外(世間)では生きるのが得意ではなさそうな人たち、とも言える。
    彼らこそが、世間に出たら絶滅してしまう危惧種なのかもしれない。

    本当にトリが好きなのは、ジロウぐらいで、あとは楽な仕事と割り切っている。
    仕事はそこそこで、あまり良好とは言えない人間関係。
    どこかトゲのある日常風景が、ひしひしと伝わってくる。

    そこへ、怪我をした人の代わりに一人の女性ノグチがやってくる。
    彼女の登場と、その本性により、研究施設内での人間関係が露わになってくる。
    そして、崖から落ちて怪我をした男の理由も判明してくる。

    非常にオーソドックスな雰囲気で物語は進行する。
    バランスが悪いながらも、どうにか立っている人間関係の表し方がうまい。

    そして、怒濤のラストへの展開。
    窓の外の風景は、どこか歪な印象だったが、なるほどそういう意味だったのかと理解する。
    ジロウとクロコシが、トリたちを殺戮する姿は恐ろしくも美しい。鳥肌モノ。うまい演出だ。
    そして、物語はこちらにフォーカスされていたことに気づくのだ。
    それは、醜さを露呈する人間関係と呼応し、凄まじいカタルシスを呼ぶ。
    この展開には舌を巻いた。

    「居場所」がキーワード。その居場所にさえいられなくなってしまうダメな男さえいる。妻がいるのに、愛人がいて、さらに…という男だ。
    ダメな人間はどこまでもダメなのだろうか。
    しかし、彼らを突き放してしまうことだけはせずに、方法は間違っていても、自らの居場所を勝ち取るために戦うことを選択した者もいるというラストでもあった。

    さらにラストにジロウとクロコシとが血まみれで舞台に登場したときは、「蛇足だな」と思ったのだが、2人の元いじめられっ子でありながら、彼らの中での温度差、ヒエラルキーみたいなものがじんわりと出てきながらの共感、そして最後に希望を見せてくれた(それが「希望」と呼べるものかどうかは不明だが)。
    そのときに、こちらにフォーカスされた物語が見事に収束していくのを見たのだった。

    実際のところ、多くの人は、自宅と会社と少しの趣味などの場を範囲とする、「居場所」の中にいる。
    それは「安心で安全な」「籠」なのかもしれない。
    しかし、その籠はいつまでそこにあるのかは、わからない。
    その前提が崩壊しようとするときに、自分たちはどう振る舞うのか、ということを示しているような舞台だったとも言えるのだ。

    ノグチ役の角替和枝さんは、あまりにも強い。どんなシーンでも強い主張を必ず突っ込んでくる。さすが、としか言いようがない。ジロウ役の伊藤俊輔さんの台詞回しが素晴らしい。うまい。クロコシ役の柄本祐さんの、どこか冷めた普通な雰囲気も良い。親子対決(笑)は冷え目だったけど。
    コウノを演じた林和義さんのむさ苦しいくて、イヤな男もなかなかだった。
    そして、女性陣は強く印象に残った。

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    2010/10/09 08:49

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