kaguya 公演情報 まぼろしのくに「kaguya」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    疾走感と混乱の中でかぐや姫の罪を問う

    ネタバレBOX

    冒頭シーンから一貫して、膨大なセリフ量とハイスピードな展開に圧倒される。独自の美学で演出された、自分たちをかぐや姫の血族であると信じて疑わない片田舎の家族の物語である。洗脳される息子と死んだと見せかけて洗脳を解こうとする母。主人公を父と呼ぶ得体のしれない女。錯綜する家族模様の中、「かぐや姫の原罪とはなにか、地球で罰を受けていたのはなぜか」を課題設定し直す後半から物語はさらにスピード感を増す。権力、富、愛情の権化となり主人公ノゾムを追い詰める母親、社会的な孤立、そこから流れるようにつながる首相暗殺事件のイメージにも結着するように見えたラストシーンの戸惑いの感情の共有は、物語全体の疾走感との落差によって効果を増しており、他に類を見ない鑑賞後感であった。

    イマジナリーフレンドとして舞台に散りばめられた人形や、ミニキッチンの演出など舞台美術と俳優との間の強固な信頼関係が見て取れた。膨大なきっかけがある作品の中でスタッフワークが光る。

    原作となる竹取物語のイメージ上でのコラージュ(宇宙、竹、道化など)と、物語の骨子(夫選び、月への帰還、原罪など)の借用が明確に言及されずに混在しているので、見ている側としては今描かれているのがどちらのレイヤーにある表象かの判別がつかず混乱しやすい。その混乱をも逆手にとってラストシーンに繋げてほしいという期待があった。またジムノペディなどの有名曲を使う場合、観客側に想像力の引き攣れが起きる。音楽、効果音の使い方に既視感がある点を演出時にどのように考えたかは気になった。

    (以下、ゆるいつぶやき)
    竹取物語での最も大きな謎である、「かぐや姫の犯した罪とは何なのか」について、「血族の原罪」として作中で扱おうとしていた点、意欲作であったと思う。改めて竹取物語を見返してみると、貴族男性どころか帝でさえ寄せ付けない常識破りの自由さを持ち、気が強く頭の回転が速く、他者の思いのままにならない「おもしれー女」であることがわかる。ノゾムの祖母はそんな自由な女性で、それを孫であり、部屋に引きこもって人形と遊ぶのが好きな内向的なノゾムがある種の憧れを持って追いかけるという構図なのが、物語で描かれない時間の奥行を感じさせた。

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    2025/05/13 12:16

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