公演情報
Music Play Live「「蜘蛛の糸」」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★
時間と交通費をかけて毎回都内に出かけて行く観劇の日々もそろそろ終止符をうつべか・・とふと思った雨の日。地元と言える場所で肩の力を抜いて味わうちょっとした非日常の時間がとても良い。(都内に勤務の者が少し足を延ばして下北沢の空気を吸いに・・と言うのも良き日常。頗る特別な時間も良いけれど日常性が大事に思うこの頃也)
ホールに入ると些か心許ない座席の安定感であったが、程よい広さの空間に程よい観客(もっと居ても良いが)、ピアノの置かれたステージを観ながら開演を待つ。
声楽とピアノ、クラリネットの三者が「出演」なので、俳優による熱演は期待せず、物語をどう紡ぐのかに関心。「蜘蛛の糸」は凡そ40分の出し物、原作のほぼ朗読だがどうやら「それ用」に書かれた譜面の演奏と共に語られ、言わば「既存の作品」であった模様。朗読については声楽家がゆっくりと、通る声で(歩いての移動程度の動きをまじえて)語って行くが、お釈迦様が糸を垂らす、カンダタが糸を登り始め、後続の者を蹴落としたら糸が切れた、といった部分だけは「間を挟んでガッと行く」位の「演技」はやはり欲しくはなった。
ただ何と言っても演奏が良い(巧いので後でプロフィールを読めば、中々の実力派のよう)。前段の演奏(ピアノ伴奏の歌、ピアノ伴奏のクラリネット、ピアノ演奏)特に二番目のクラリネット演奏が始まると胸に溶け入るようであった。三者とも選曲は童話チックな可愛らしい世界を狙っていたが、ピアノ独奏では技巧が優れていながら柔らかな感触。
ただ、音楽演奏で起きる拍手と、後段の「蜘蛛の糸」の後に起きる拍手では、違うのだな、という発見。技術的には演奏要素が秀でていた朗読ではあっても、紡がれたドラマが終幕した後に起きる拍手は熱が違う。コールで立つ三者の風情も違う。演劇が持つ「劇しさ」の種を見る思い。
この公演を認知したきっかけの俳優(今回の演出)森山太氏は表には出ず、インカムを持ちながら立ち動いていた。次もまた拝見したい(いつになるか分らぬが)。