宮殿のモンスター ~The Monster in the Hall~ 公演情報 劇場創造アカデミー「宮殿のモンスター ~The Monster in the Hall~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    辛く苦しい主題を内側におさめず、外へ外へとひらいていく果敢な上演だった。
    ゲームやラップを用いてコミカルにPOPに描かれる分だけかえって痛々しい現実が胸に迫る。
    自助・共助ばかり叫ぶ世の中に疑問や反発を覚えると同時に、公助という情報の届かなさ、人に助けを求めることの難しさ、他者から延ばされた手をおいそれと信じ、掴むことのできないままならなさが切々と描かれていた。

    以下ネタバレBOXへ続く

    ネタバレBOX

    幼く脆く、しかし可能性に満ちた少女の未来に少しの光が差したことに安堵し、安堵だけでは不十分だとも感じた。
    児童相談所と連携して子どもを保護したり、人権センターの相談員として働いていた母がよく言っていた「助けを求めてもらわなくては動けなくてもどかしい」、「助けを求める方法を知らない人ほど、早急な助けが必要なのに」というような言葉を思い出したりもした。

    劇中で尾崎豊のforget-me-notが流れた時、驚きとともにそのラブソングがいくつもの枝葉をもって自分の中に辿り着くのを感じた。少女を残し死んでしまった母が選んだ"加速"に、子を産んだ母親がされども自分であり続けたいと願う様子が浮かび上がり、私は共感すらしてしまった。

    この世界には、誰のことも責められぬ出来事がある。その上で守られることから溢れおちてしまう小さな存在がある。そんなままならない現実に手を伸ばす作品だった。これからを生きる小さき作家の彼女にとって「物語」が現実からの逃げ場ではなく、未来に広がる可能性であり続けることを願いながら地続きの今を見渡した。

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    2025/04/30 23:54

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