公演情報
タカハ劇団「他者の国」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
「他者」の対義語は「自己」なのだろうか。
そんな自分の考える「他者」には一体誰が含まれ、誰が含まれていないのだろうか。
舞台上、戦前の医療界に横たわる諸問題がみるみる世相を詳らかにするけれど、それはかつてのそれではない。"今"だった。
選民意識や優生思想、横暴なホモソーシャルとそれが招く女性蔑視、性被害に貧困、望まぬ妊娠、ヤングケアラー、そして戦争。人に対し「生産性」などという言葉を放つ人間が何年も国政の中枢にいるこの国が定義する「他者の国」とは一体どこだろう。エンタメの深部から何一つとして解決せぬ様々な問題に手をのばしていた。
緊張と緩和をシームレスにそれでいて混在させず一つ一つの抑揚を生む俳優陣が一人残らず素晴らしい。誰より奔放に振る舞う母柿丸美智恵さん、相手の瞳を射抜く様に信念を貫こうとするその娘平井珠生さん、愛着と母性を全身で体現する田中真弓さん。女が排除される時代で自分を生きる女たちの姿があった。