公演情報
悦楽歌謡シアター「蘭獄姉妹の異様な妄想」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★
私が何に惹かれて当日券に駆け込んだかというと、それはこの企画に通底する恐ろしいまでに純粋な演劇への衝動でした。
悦楽歌謡シアターの小幡悦子さんと歌川恵子さんは演劇を始めて間もない一昨年に共演、その作品の作演出を手がけた松森モヘーさんの演劇に惚れ込み、自分たちも演劇を主催をしてみたいと立案し上演に至ったのが本作だという。
さらに遡ると、お二人は元々はモヘーさんの作品の観客だったというのだから演劇って本当に恐ろしくて素晴らしい。
誰がいつ始めてもいい、そしてどんな演劇があってもいい。
そんな当然のことをなぜか私は時々忘れてしまう。忘れたくないのに。
だからこういう演劇に出会うといてもたってもいられないのです。
意味とか技術とかだけで演劇は語れない。理屈じゃ説明できないものに会いたくて、びっくりしたくて、させられたくて演劇を観ていることを改めて気付かされた気持ち。
作品はまあ極めてカオス!!でも、それもそのはずで妄想というものが混沌としていないはずはなく、私もまた涼しい顔しながら頭で考えてる様々を一つに具現化したらこんな感じかもしれない。
みんなで同じ歌を歌うこととそれぞれが好きな歌を歌うこと。その双方いずれもが人間の"異様な欲望"であり人生そのものなような気もして私はやっぱり、そのどちらかではなく、どっちもやってしまうこの演劇の破茶滅茶さに、その混沌にグッときてしまう。
私もまた演劇に人生を狂わされた人間の一人です。そして救われた一人でもある。
人生においてはベテランで、演劇においては新人のお二人。歌川さんの瞳があまりに美しかったこと、小幡さんの声がとびきりまっすぐだったこと。こればかりは他のどの演劇を探しても見つからない。
「演劇の主催」を"妄想"で終わらせなかったこと。意味のない演劇があってもいいと叫びながらその存在に意味が宿っていたこと。いつか私も舞台に立つだろうか。恥ずかしながらついそんな妄想をしてしまった。
純粋に狂いゆく演劇と人生だ!