buzz 公演情報 studio salt「buzz」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    横浜まで行った甲斐がありました。
    こういったどこまでも深い読みの舞台を観ると、感想をUPするのを考え込んでしまう。もしかしたら、言葉によっては舞台の印象を違ったものに囚われてしまいかねないからだ。だから、なるべく忠実に偏見なしで書いたつもりだ。それでも、もし、この文章が作家・椎名泉水の意図するところと違ったなら、こんな見方もあるのだと、サラリと受け流して欲しい。。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    舞台はいきなり少年らの暴力的なシーンから始る。暗転の際の「ジーー!!」という濁音による音響効果は絶大なインパクトがあった。そうして暗転後の少女監禁の場面、どうやって少女をいたぶって暴行したかをも描写し、割に残忍な場面も捉える。だから観客はそれなりの衝撃を受けると思う。しかしこれが真実なのだと思わせる力のある舞台だった。

    この物語のモチーフは「東京都足立区綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件」だ。彼らがどんな状況下で少女を殺すに至ったかを、家族との関わり、犯人の兄との関係、交友関係を織り交ぜながら舞台化してあった。

    しかし、この物語を舞台化した作家の意図は少女を殺した動機よりも、彼らがクサって閉じこもるまでに、誰でもいい、近くに救いはなかったか。に焦点を当ててるような気がする。だから、「あの時、彼らは野球をしていたなら・・、・・・だったなら。」という後悔にも似た兄・満の終盤のセリフが重い。

    出所した豊と同じ工場で働く坂本との会話に思わず落涙してしまう。世の中にいらない人間なんてあるはずもないのに、彼らは自分たちがそうだと言い切る。ハッピーメロンとカニパンを食べながらの穏やかな風景での会話だ。

    34歳になった豊は殺した少女への罪悪感に苛まれ、「自分が死んでも罪は償えないんだろうな・・。」と後悔の念で呟き、兄の満もあの時、少女を助けずに見殺しにしてしまった罪の意識によって蝿を恐怖に感じてしまう。そう、蝿は少女が腐りかけた身体の臭いによって集ってきたあの蝿なのだ。

    現在は弁護士になった満も家庭を持ち15歳の少女がいる。だからこの娘を守ることに必死なのだ。そうしてあの時の少女にも家族は居た。


    冒頭のシーンが終盤にも繰り返される。撒いた伏線をきっちり回収し、兄・満は過去の少年だった豊に投げかける。「そっちに行っちゃ駄目だ!」と。

    二人で投げ合ったキャッチボールのボールは兄が考えもしなかった方向にずれ込み歪んでぐにゃりと方向転換し取り返しがつかないほど遠くに飛んでいったままだ。一歩間違えた道だけれど、その道のりは遠い。

    照明、導入音楽「あなたが私にくれたもの」、キャストの演技力、キャラクターの立ち上がり、構成、演出、まったくもって見事だった。ひじょうに素晴らしい舞台だったと感じる。もっと早めに観て宣伝してあげたかった、と後悔したほど。

    追伸:麻生0児の中学生に震えた。笑、、、ああいった中学生って実際いるよね。実はワタクシ、彼のキャラクターが好きだ。癒される存在感のある役者だとつくづく思う。

    次回も是非、観たいので次回公演には必ずメッセージを下さい。でないと公演日を忘れてしまいますので・・。

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    2010/10/03 17:46

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