エアスイミング 公演情報 劇団しゃれこうべ「エアスイミング」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    この演目を観るのは四度目。全て劇団が違う。こんな難しい作品によく挑む気になるものだ。それぞれ全く違うやり方で取り組むのでその都度感心する。

    今回、場面転換に横開きのカーテン状白シーツを使用、手前と奥の二枚。そのシーツを利用して影絵を投影する。このアイディアは正解。影絵を使えば説明し辛い神話なんかも人形で簡略化、伝え易い。(今回はなかったが月へと飛んで行く二人なんかも絵で見せられる)。

    今作はベルセポネーとドーラのエピソードとポルフとドルフのエピソードが交互に語られ、一人二役の二人芝居の戯曲。それを四人の役者に別々に演じさせている。随分実験的な試みだ。この作品の売りそのものを敢えて解体している。成程。
    特筆すべきはドーラ役の和泉美春さん。今までと全く違うキャラクターで見事だった。また新しい扉が開かれたのでは。
    こんな戯曲に本気で挑む劇団にRespect。

    ネタバレBOX

    1924年、聖ディンプナ精神病院に収容されたペルセポネー・ベイカー(原島千佳さん)、一日一時間だけ共同作業として他の収容者と階段と風呂場の掃除をさせられる。それ以外に人と接することのない独居房生活。2年前からここにいるドーラ・キットソン(和泉美春さん)が仕事を教えてくれる。

    ベルセポネー 上流階級のお嬢様だったが、父の友人であった家庭持ちのレジーと不倫し出産。怒り狂った父親によって産んだ赤子は養子に出され、この病院に棄てられる。原島千佳さん。

    ドーラ 男装趣味と葉巻を吸うことが反社会的と見做され、この病院に収容される。兄弟全員徴兵で戦死、生き残った自分への罪悪感を男性的に振る舞うことで律している。和泉美春さん。

    ポルフ ベルセポネーが現実逃避として演じるもう一人の自分。金髪のウィッグを被った能天気娘。ハリウッド女優ドリス・デイに夢中で猫を飼いたがる。安田美忍さん。

    ドルフ ドーラが演じるもう一人の自分。魔術書を読み漁り、穿頭術で自分の頭の中の苦しみから解放されようと願う。男以上に戦場で活躍した歴史上の女性達を崇拝している。田村祐子さん。

    この戯曲には三つ、要となる見せ場がある。ここをどう料理するかが演出家のセンス。
    ①「エアスイミング」の場面。『Fly Me to the Moon』をバックに二人が踊る。ずっとこの精神病棟に監禁されたままだとしても心と想像力は何処までも自由なんだと高らかに宣言。
    ②ベルセポネーとドーラがワルツを踊るシーン。レジーとの出会いの再現。
    ③精神的に限界が来てヒステリックに喚き叫ぶドルフの足を盥の水で綺麗に洗ってあげるポルフ。キリストの弟子への洗足もイメージ。

    面白いのはベルセポネーとドーラ、ポルフとドルフが少しずつ同時に舞台上に存在するようになっていく。これを更に推し進めて二人の組み合わせを変えていっても良かった。難しいのはドーラとドルフの違い。そこをクリアしないと別の役者を立てる必然性がない。

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    2025/04/27 17:29

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