通夜もなかばを過ぎて 公演情報 ゆく道きた道「通夜もなかばを過ぎて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    通夜を通して、過去や人生と向き合う姿を面白可笑しく描いた葬儀劇。物語は誰が亡くなったのか、というミステリーではないが 謎が肝。ひょんなことから棺桶の御扉(みとびら)を閉じてしまい、故人を確認出来ない。クセの強い高齢者8人が現れ、悲劇と喜劇の狭間を彷徨うような物語へ。

    現代は、気軽に繋がれるようになったが、それでも繋がりきれない想いを抱えている。葬儀は、故人と何等か関わりがあった人たちが参列するものだが…。市場経済の 見えざる手ではなく、正体不明の故人によって操られるような不思議さ。不思議と言えば、葬送にも関わらず、生きるのは大変だったし と語ることによって<生>を感じるところ。他者を弔い 自らの人生を顧みる。

    故人との関わりの手がかりを掴むため、自己紹介などを始める。そこに シニア劇団らしい特長ー役者と役柄が混然となり、どのような人柄でどんな人生を歩んできたか、とぼけたユーモアと哀切が滲み出てくる。
    (上演時間1時間15分 休憩なし) 【亀組】 

    ネタバレBOX

    舞台美術は和室の中央に棺と簡素な祭壇。周りの広い空間は、後々現れる人々=幽霊の動きを確保するため。本来であれば参列者が集まるところであるが、故人は あまりにも高齢のため親戚など誰も来ない。葬儀社の社員2人(ベテランと新人)が右往左往して準備をしているだけ。燈明や線香に火をつけるため、ベテランが場を外す。

    客席通路を通って高齢者8人が舞台上へ。新人社員が棺桶の御扉を閉じてしまい、幽霊は実体がないから 扉を開けることも出来ずイライラ。故人は誰なのか 自分との関りは と詮索したくなるが…。そこで思いついたのが自己紹介を通して、故人との繋がりを探ろうというもの。因みに役名(15人)は 変わっている。例えば、間しのぶ(ハザマ シノブ)、燈芯久信(トウシン ヒサノブ)、枢木うめ(クルルギ ウメ)、要金栃世(カナメガネ トチヨ)等、フリガナがないと読めないような名前ばかり。何となく葬儀または霊界に関係していそうな。職業も霊媒師 等がおり、ますます謎めいてくる。どのような人生を過ごしてきたのかを語るが、やはり この世に未練はある。この1人ひとりの語りが肝。シニア劇団らしく、役柄が役者の人生と重なるようで、味わい深さが滲み出てくる。

    死神(上司と新人)が死者を迎えに来ると、クセ強の高齢者が列をなして集まりだす。夜が明けるまでに故人の魂を選び出さなければ、代わりに新人の死神が地獄へ…。新人の死神と8人の高齢者(幽霊)の虚々実々の攻防戦のようなものが始まる。多くの者が、まだこの世に未練があり、何とか現世に戻りたい。思い描いた人生ではないけれど、それでも幸せを求めて必死に生きてきた。そんな姿を想像させるドラマ。葬儀(お別れ)の場における悲喜交々の追憶、それでもコメディだから明るく大らかに展開していく清々しさ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/04/26 11:26

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