Root Beers-ルートビアーズ- 公演情報 劇団東京ヴォードヴィルショー「Root Beers-ルートビアーズ-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    纏うものを外す手練
    物語の仕組みがしなやかで巧み。

    淀みのない時間の解け方と
    凛と豊かな物語の質感にもっていかれ
    がっつりと見入ってしまいました

    ネタバレBOX

    冒頭の短いシーンの蓄積でぐいっとひっぱられ
    そのまま、物語の醸す雰囲気に閉じ込められる。

    そこから観る側に
    やくざのリーダーの記憶が消えた姿と
    挿入される夢の女性のイメージの重複が
    次々に重ねられて
    観る側があっという間に前のめりになっていきます。

    やくざの世界の緊張感や
    拘束された男たち・・・。

    物語の本筋をしっかりと保ちながらの
    凄味を失ったリーダーと
    嵐による待機で解けていく時間が
    とてもしたたか。
    日本からやってきた愛人や
    女衒たちが連れてきた女性やその家族などが
    単に物語を膨らませるだけではなく、
    彼らがやくざとして纏う
    気概をもしなやかに外して見せるのです。

    その解けた感じが
    やくざたち自身ににとどまらず
    周りのキャラクターたちの姿を
    照らし出していく。

    記憶を失ったリーダーを呼び水にするように
    個々の人間臭さが浮かびあがってくる。
    よしんば拘束されている二人の男であっても、
    消されるはずのふたりがすごすモラトリアムの時間が
    次第にその場の雰囲気に馴染んで、
    彼らからも、個性が滲みだして場の色に変わっていくのです。

    作り手が仕組んだ
    エアポケットのような時間に入り込み、
    その時間の質感に照らし出された
    ウイットとペーソスの隠し味を持った秀逸な役者たちの人物描写に
    取り込まれてしまう。
    それが、単にコアをさらけ出すのではなく
    彼らが纏うものを、したたかに観る側に切り出していく・・・。
    作り手の作劇の手腕に瞠目するばかり。

    冒頭、ルートビアーを口に含んで
    記憶が飛ぶシーンの説得力が
    終盤記憶の戻るシーンで再びやってきます。

    やくざたちもそれぞれに
    一旦緩めていた気概を再び纏う。
    大胆に挿入されたリーダーと妹の時間が
    したたかに生きて物語の全容を見せる。
    伏線が鮮やかに回収されているので
    その姿は凛として、べたな言い方をすればカッコ良い。
    中盤に醸し出された空気とのコントラストに
    キャラクターたちが纏うものが
    鮮やかに浮かび上がる。

    さらには
    捉えられた男たちの結末も
    しっかりと抜けきってくれて
    舞台の余韻を切らない・・・。

    決してテンションや形だけで押すような舞台ではないにも関わらず
    こういう作品は観ていて痺れます。

    初日ということで
    数か所、ふっと空気が留まる部分はあったものの、
    それが感じられるほどに充足された
    舞台上の密度にがっつりとやられて。
    いろんな色に満たされた時間に
    浸りきることができました。

    終わってみれば、
    観る者を放さない豊かさを持った
    極上のエンタティメントでありました。

    ☆☆☆★★★◎◎△▼

    0

    2010/10/02 08:24

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大