旅するワーニャおじさん 公演情報 パンケーキの会「旅するワーニャおじさん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『ワーニャおじさん』

    アイルランドのブライアン・フリール翻案による1998年初演作品。
    『ワーニャ伯父さん』はつまらないと思っていたがこうして観てみると面白かった。成程、提示され構築された関係性にシェイクスピア的多情多感な情緒、エッセンスを振り掛ける訳か。この関係性のどこに一番思い入れるかのセンス。凄く勉強になった。
    二面向かい合わせの客席はガッチリ入っていて『寂しい人、苦しい人、悲しい人』よりも席を詰めている。青年団テイストで客入れから役者がステージに登場、役として日常を過ごし場の空気感を醸し出す。どこからか風が吹いている。窓の外の天候を意識させる演出。

    主演ワーニャ役、柳内佑介氏はオリラジ中田っぽい。47歳設定にしては若い印象。敢えてこういうキャスティングにしたのか。
    アーストロフ医師役、内田健介氏は巧すぎて鼻についた程。どんどん格好良く見えてきてクライマックスではレット・バトラーのよう。
    元教授セレブリャーコフ役、大原研二氏は高須クリニックの高須克弥に見えた。
    皆が恋する彼の後妻エレーナ役に佐乃美千子さん、流石。
    ワーニャの姪っ子ソーニャ役に渡邊りか子さん。

    場面転換として白く長いカーテンを客席前二面に引く。様子がうっすらと透けて見え、舞台装置の移動や立ち位置の指示等普通に聴こえてくる。芝居全体が少しメタ的な方法論の演出で役者が時折観客に台詞を投げ掛けもする。

    前半、古典戯曲の取っ付きにくさ、ロシア人名と関係性の判り辛さから客席もぼんやりと思いきや、どっこい後半からかなり盛り上げた。

    二作品をセットで観た方が楽しめる。作品の構造についてよく解る。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    MVPは渡邉りか子さん。この人はヤバイ。杉咲花のような少女性とみるきーのようなあたふたが素晴らしい。どう見ても10代だが自主映画の監督もこなす31歳とは···。

    クライマックス、盗んだモルヒネの瓶をズボンの裾を上げ、靴下の中から返すワーニャ。受け取った内田健介氏は客に向かって「酷い演出でしょ」と笑いかけるギャグ。

    「埴生の宿」を歌ったり、「愛燦燦」の歌詞が出たり仕掛けが多い。赤い毛糸玉が引っ張られて一本の糸が空間に張られたりもする。
    個人的にはラストがまだるっこしい。それっぽいのが延々続く。

    『ワーニャ伯父さん』を簡単に要約すると自分の人生を捧げたものに裏切られ、奉仕と労働に費やした半生に悔いる男。金も成功も夢も家庭も何一つ手に入らなかった。何だったんだ俺の人生は?多分同じく望んだものを何一つ掴めないであろう姪が励ます。「伯父さん、生きていきましょう。長い長い日々を長い夜をじっと耐えるの。安らぎはないかも知れないけれど他の人の為に働きましょう。そして死んだ後の世界で一息つくの。神様にどんなに辛かったか申し上げるのよ。」

    ラストはテーブルに着いた4人がそれぞれの作業を続けたまま終演のアナウンス。その横をぞろぞろ帰る観客。

    気分ははちみつぱい『塀の上で』

    空はまだ群青色の朝
    外はそぼ降る鈍色の雨
    窓にこびりついた残り顔流し
    牛乳瓶に注ぎ込む雨よ

    (中略)
    塀の上で、塀の上で、僕は雨に打たれ見てただけさ

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    2025/04/15 14:42

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