夏砂に描いた 公演情報 miwa produce。「夏砂に描いた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    異なる時間軸で紡がれる慕情や郷愁、それを繊細にして抒情豊かに綴った珠玉作。登場人物は、僕・君・女・母・彼の5人。僕と君は勿論、すべての組み合わせで会話があり、長い時を経て関係性が明らかになっていく。その情景が、脳裏に鮮明に浮かび上がるという、朗読劇ならではの醍醐味。5人の喜び 悲しみ、そして驚きといった心情が手に取るようにわかる。

    少しネタバレするが、舞台は 或る年の8月31日夕暮れ、人気のない海辺。物語は 茫洋と海を眺めて、街へ帰る最終バスに乗り遅れた高校生2人の淡い思い、その回顧から始まる。今となっては夢か現か、過去と現在を彷徨する。可笑しくて 優しい、でも悲しくて残酷な…。舞台技術、時間と心情を表す照明の諧調、音響は さざ波や微風、音楽は咲田雄作 氏によるギターの生演奏、この上ない贅沢な時間が舞台空間に流れ、実に気持ち良い。
    (上演時間1時間30分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    5脚の椅子が横並び。そして上手には別の椅子、そこにギターの生演奏をする咲田雄作 氏が座る。朗読劇ゆえ基本的には動かない。最初の登場と最後の退場時に客席通路を何人かが通るだけ。舞台上には浮き輪やビーチサンダルという夏イメージ。
    朗読の情景にあわせて照明を諧調する。例えば時間の変化や5人の心情表現など、淡い照明色であり強調すべき場面ではスポットライトへ、その効果付けが巧い。同時にピアノ音楽を流し、ギターの生演奏が適宜入り情景が豊かになる。

    8月31日夕暮れ、この海辺にある海の家でバイトをしていた2人。同じ高校の先輩 ー高校3年(君)と2年(僕)の会話、それぞれ淡い気持ちを抱き、将来の夢を語り合う。僕は画家を目指し、君は…それを聞きそびれた。後々わかるが花嫁になること。この時、君が僕の絵が見たいと せがむから棒で砂浜に描いた。取り留めのない会話、そして来年もここで会おうと約束したが…。君は明日、横浜へ引っ越し転校するという。

    翌年、君は現れなかった。あれから12年、僕は30歳になっていた。そしてあの時と同じように最終バスに乗り遅れた女と出会った。女は途方に暮れ、歩いて街まで行くか、始発まで浜辺にいるか思案している。僕は女に話しかけ、一緒に歩いて帰ることにした(疲れたら 途中でラブホテルもあるし)。実は女は君の妹。そして君は難病に侵され入院中。病院の理学療法士であろうか、彼の治療を受け、そしてプロポーズされる。君は病気のことを知っており、だから花嫁になりたいと言ったのだろうか。

    さらに、それから10年、僕は40歳になり離婚し独り身である。そして以前会った女と偶然あの海辺で出会う。女も結婚し子供がいるが離婚したと。偶然、彼は病室に僕の絵を飾って君に見せてくれていたらしい。君が亡くなったことは女(君の妹)から聞かされた。さらに年月が流れ、あの海辺に僕と女ー2人は結婚した。年を取り棒ではなく杖をついている。高校時代の淡い思い出、それも1日の…その追慕が実によく描かれている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/03/29 17:45

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