実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/04 (火) 14:00
大学教授であるチェ夫妻は、海外留学を控えた娘の送別会を開くために別荘を訪れる。彼らは自分たちの平穏で豊かな暮らしに満足していた。
しかしその平穏は、娘のチェ·スンヨンが婚約者で少なくともスンヨンとは30は離れた大学非常勤講師の中年男を別荘に連れてきたことを発端にどんどんお互いに目を背けていた都合の悪い事実(不倫など)が浮き彫りになり、今までリベラルな考え方で寛容に見えた教授のチェ·ミョンガンも化けの皮が剥がれたように偏見が露呈し、妻のカン·スンオクも今まで上品で優しく見えたのが、娘の婚約者が中年男だと分かり、娘と30近くも離れていると知って忌避感が露骨に現れ、豹変して品位の欠片もなくなる。そして成り行きか、故意かは判らぬが婚約者チン·ソンピルを巡って事件が起き、現場にいた管理人家族の息子キム·ハヌルが犯人に仕立て上げられそうになるが、それをハヌルが阻止しようとしたりと、事件の責任を押し付け合うためについた嘘が嘘を呼び、お互いに保身に走り、疑い合う。
後からパーティー(娘の送別会)に参加した管理人家族のキム·チョルス夫とチョン·エラン妻に事件のことを隠し切れず、物置部屋に置いた死体を見つけられたので死体を隠し通すことはもはや無理とチェ夫妻らが悟り、何とか真相までは突き止めさせず、責任逃れをしようとあがく様が大いに笑え、終盤でお互いに追い詰められ、今まで我慢してきたものが一気に吹き出し、パワーバランスが崩れ去り、最期に残ったのはキム·ハヌルのみという終わり方に愕然とした。
非常に韓国社会の暗部、富裕層の偽善、欺瞞、貧困層の鬱屈した気持ちなどが劇を通して浮かび上がり、韓国社会の格差社会を嫌と言うほど震撼とさせられた。
この作品は、ポンジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』と全体的には比較的テーマ性としてもかなり似かよっていると感じたが、ポンジュノ監督の映画以上に救いがなく、暗鬱とした気分になり、もはやキム·ハヌルに輝かしい未来が見えない終わり方に現実を突き付けられた。しかし、一部の光さえない徹底した不条理コメディサスペンス劇にある意味、清々しささえあった。
やはり不謹慎だとは思うが、人の不幸を劇で観て、家族が崩壊し、知り合いで信頼しあえていたと思っていた管理人家族との関係性も壊れていきといった過程を観ていると、日頃のストレスや鬱憤が晴れて、気持ち良かった。