実演鑑賞
満足度★★★★
12月、冬の訪れの時期に毎年上演される座・高円寺の音楽を取り込んだステージである。形としては朗読劇といった作りだが、小品ながら音楽として成立している演奏を取り込んでいる。今回は芸術監督に新しく就任したシライケイタの作・演出でシューマン(亀田佳明)と妻・クララ(月影瞳)の交わした往復書簡を読みながら何曲か秋山沙穂が演奏する。休憩15分を挟んで2時間30分。
このシリーズはもう20年を超える実績がある。今年は例年好演されてきたアメリカのジャズを素材にした「アメリカンラプソディ」に替わって「トロイメライ」になった。シューマンの音楽が演奏されるのだからシューマンの話か、地味じゃないか、と思いながら見ていると、半ばでシューマンは若死にして、後半はブラームスとのの往復書簡になる。これは、妻クララの話なのである。シライケイタ、ラストに余白の日記を出したり、構成はうまいものである。
19世紀、男性社会だったウイーン音楽界に演奏家として受け入れられ、女性音楽家として初めて音楽界でリーダーになっていくクララの生涯が演奏と共に語られる。亀田はこういった役回りはお得意で今回もシューマンやブラームスを過不足なく読む。月影が父に反発しながらローティーンの頃からシューマンとの純愛に生き、たくさんの子供たちをもうけ、毅然として演奏家としてヨーロッパ中を巡演していく自立する女を読む。好演である。
自立する女性物語として古いが王道の話で初演ながら客席は老若男女バランスの良いいかにもの「杉並区民」で満席であった。
この企画も10年を超えれば劇場名物になる。こういうシリーズ公演を一つでも持っていることは自治体劇場としては大成功である。組み合わせるショパンの「GEORGE」は定評ありの公演だがピアノで固めるのも一案だが、やはり前作のように軽音楽系の物語欲しい。芝居に比べれば仕込みは楽なのだから三本立てでも意のではないかと思った。客席300クラスの劇場がそれぞれ四季にあわせ名物公演を持てれば東京も素晴らしい演劇都市になる。なれば良いなぁ。