荒野に咲け 公演情報 劇団桟敷童子「荒野に咲け」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/12/19 (木) 14:00

    座席1階

    ラストシーンは感動のあまり泣きそうになった。桟敷童子の本領発揮である。このような形になると構えていても激しく心を揺さぶられた。見ないと損する、傑作だ。(満足度の☆を6つにしたい)

    開幕前に舞台上段にかかっている1枚の絵。何の絵なのかは、一見しただけでは分からない。この絵が、物語の重要なカギを握ることになる。開幕前にはスポットが消えてこの絵は暗闇の中に沈む。再び登場するときが、物語が大きく動くときだ。
    両脇に階段がしつらえてあるだけの開幕前のシンプルな舞台装置に、今作は桟敷童子の特長である派手な、あるいは美しい舞台美術はなく、役者たちの動きやせりふだけで物語が進行するのだろうと感じていた。これが、最後の最後で、いい意味で大きく裏切られた。
    舞台は九州のとある田舎町。人口減少で鉄道も撤去され、かつて鉄路を走った機関車は駅を改装した郷土資料館にポツンと置かれている。この町で食堂(今は弁当屋)を営む一家と、その親類である貧しい一家が主役である。食堂を営む一家は人口減で経営は縮小したものの娘たちを大学に出し、従業員も雇ってそれなりの生活をしている。もう一つの一家は、貧しいながらも一家で登山やキャンプに出かけるなど表面上は仲が良かった。親類の一家に負けじと息子を無理に進学校に行かせようとするなど背伸び気味という面はあったけれども。それだけならよかったのだが、この一家に次々と不幸が襲いかかる。
    今作の作者は言う。「10年以上も前から書こうとしていた題材だが、暗く重く、あまりにきつすぎて何度も挫折した」。僕らは彼らに何もしてあげられなかった。そんな思いで書いたという。「あまりにきつすぎて」というのは、恐らく現在もそうだ。これは、ラストの大感動シーンがあることのメタファーであることから推察できる。
    また、主人公の娘(大手忍)がトラウマになっていたメロディーが、あまりにも現実感があって客席の心をわしづかみにした。

    劇団創設25年とのことで客演を招かず劇団員だけの公演。やっぱりよく鍛えられている。実に濃厚な2時間であった。

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    2024/12/19 19:12

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