実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/12/13 (金) 14:00
ナチスの親衛隊SSだった2人の幼なじみ。今は認知症となり介護施設で暮らしている。そこに、一人の青年が訪ねてくる。やはり2人と幼なじみだった自分の父親の消息を尋ねるためだ。かつての記憶を呼び起こすように話し出す元SS。衝撃的な内容が語られる。
主宰の染谷歩の創作なのだが、すこぶる興味深い内容だ。何の疑いもなくヒトラーの民族浄化に加担した男たち。認知症となっても過去の記憶は残っているため、今もかつてのSS時代を夢遊病のように思い出して動く場面がまず、登場する。その姿はきわめて醜悪だ。この場面からして衝撃的である。
物語が進行し、見せ場はやはり、かつての幼なじみとのかかわりを語る場面。腕章、ピストルなど小道具を効果的に使い、強烈な独白場面を描き出した。これを迫力満点にきっちり演じきる俳優の実力もさることながら、このような物語を作り上げた劇作家の勝利と言って間違いない。客席の若い女性が何度も涙をぬぐっていた。
俳優はわずか5人。中央に小さな舞台を配置し、そこには小さな箱があるだけのシンプルな演出だ。シンプルなだけに余計なものがそぎ落とされ、役者の演技が迫力を伴って展開されるという小劇場ならではの魅力を創出するのに成功している。
客席はわずか20人程度。これで公演が成り立つのだろうかと余計な心配もしたくなるが、客側からすると実にゆったりしていて、ぜいたくな鑑賞体験となった。