実演鑑賞
満足度★★★★
タイトルそのままの内容である。
坂手洋二は90年代から、一貫して政治的立場(支持政党という意味ではない)を明らかにして演劇を作り続けてきた演劇人でその演劇を上演する自ら主宰する燐光群もまたいくつかの他の作家作品もあるが、坂手作品を上演し続けてきた。出発は小劇場だから、旧党派的左翼演劇とは明確に一線を画し、ポジションを言えばいわゆる「リベラル・左派」といったところだろうか、旧弊としか言いようのない旧新劇の主流と異なる体制批判演劇を作ってきた。時代とともにスタイルも新しい。レッテル張りは坂手の望むところではないだろうが、その立場からいくつかの世に広く受け入れられた優れた作品もある。もともと素材の選び方も、芝居のつくりも「うまい」作家なのである。
坂手が推進した社会の現実の葛藤とその進むべき道筋にドラマを見るいわゆる「社会派」作品も時代とともにかわってきた。
ここ十年ほどは、中津留章仁。古川健。横山拓也、シライケイタ、と若い作家の台頭も著しい。彼らは、体制や政治批判に軸足を置くときも、坂手以前の作家が置いたように、敵役に安易に批判対象を置いたりしない。敵役もまたこの社会の中で機能を持っている現実をよく知っているからである。彼らは左右を問わず政治的党派の言説を鵜呑みにしたりはしていない。彼らは事実やデータを重視する。カポーテ以来のニュージャーナリズムに近い。
この坂手の新作は、根底に日本の琉球に対する長年の批判があるが、それを琉球の酒事情の事実から解こうとしている。ドキュメンタリ-演劇といったスタイルである。作家本人が酒好きだなと、思わせるところもあって、そういうところでは足を取られない長年ぶれずに作品を発表し続けてきた円熟さが見えた。
それにしても長年劇団を支え、最近ではテレビや映画のいい脇役が務まるようになった長年の戦友の俳優たちも年輪を重ねたなぁ。長い公演だがほぼ満席。