ウソの歴史のツクリカタ 公演情報 劇団KⅢ「ウソの歴史のツクリカタ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    説明の「男も及ばぬ大力無双 毘沙門天の化身と言われる上杉謙信。その名を歴史に残した武将。史実に謎を残した男」から、何となく<ウソの歴史>の想像がつく。この設定は 根強く囁かれており、他の謙信を扱った舞台でも観たことがある。

    本作は、戦国時代らしく影武者という存在を絡めることによって、心の深淵を覗き込むような深みを持たせている。特に中盤から終盤にかけての謙信と影武者、夫々の葛藤を激白する場面は面白い。それだけに前半の緩い冗長のような場面が惜しい。前半の柔らかさと後半の硬さ、その落差というかギャップで印象付けようとしたのだろうか。
    スピード感ある殺陣、それを効果的に観(魅)せる照明、迫力を煽るような音響音楽は好かった。

    タイトルは、現代的な問題も潜ませており興味深かった。戦国時代という生き残りをかけた修羅の時代、翻って 今は剣からペンへ、さらにインターネットという目に見えない武器を駆使して勝者となる。そこに風評という魔物が…。
    (上演時間2時間5分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は段差を設え、後方に長尾家「九曜巴」と武田家「武田菱」の家紋入りの旗。さらに龍/虎が描かれた白布2枚が垂れ下がる。前面は広いスペース、段差の上り下りと相まって躍動感を出し 殺陣をダイナミックに観せる。

    物語は上杉謙信の幼名ー虎千代を上手く使った設定。上杉謙信には、根強く女性説が囁かれている。他公演では、この説に基づいて始めから彼を女性として描いていたが、本作では本人(光)と偽者(影)が…。登場人物の多くは歴史に名を残す者であるが、フリーランス忍者 飛び加藤という架空の人物が肝。長尾景虎(後の謙信)と飛び加藤の殺陣から物語は大きく変わる。

    戦国時代の跡目ー男系男子が家督を継ぐ、今でも似たようなことを聞く制度。越後がまだ完全に統一出来ていない時期、長尾家を継いだ景虎。幼い時 一緒に寺へ預けられ女 千代、2人で行う兵棋演習で景虎は千代に一度も勝てない。優秀であるが 女ゆえ景虎の影として付き従い、自分の存在・価値を示すことが叶わない。一方 景虎は毘沙門天の化身と言われるが、自分の才覚に自信が持てない。宿命の悪戯か、千代が景虎に成らざるを得い状況へ。

    わずかな家臣しか景虎の容姿を知らない。鎧を身に着け顔を被い武田軍に立ち向かう。どちらが光で影なのか、しかし国や民を思う気持ちは同じ。そんな決意を示す千代のラストシーンが力強い。昔も今も風評(噂)は大切か。大将(景虎)の存在は絶対で、敵 武田軍に知られてはならない。苦肉の策が千代の身代わり。その嘘偽りこそが長尾(上杉)家の存亡を左右、延いては民のため。ウソから生まれた 慈しみや思いやりであっても、それが時を経て事実になることも…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/11/29 00:24

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