実演鑑賞
満足度★★★
花組芝居の新企画、花組ヌーベルシリーズの作品で、原作は岡本綺堂の「平家蟹」、作者はかつて劇団に在籍したこともあり今はあやめ十八番を主宰している堀越涼。下北沢のB1である。「平家蟹」は,一種の源氏平家の乱にまつわる2幕の妖異綺譚。壇ノ浦で滅んだ平家の人々が蟹になって報復する話で大歌舞伎でも滅多にやらない演目だ。
この作は蟹を蝗に,源平の争いを現代の公害の蝗駆除と、自然保護の話に置き換えているが、それはご愛敬と言ったところで,本筋は作者が夏のあやめ十八番で書いた神社の相続にまつわる「雑種小夜の月」のように,誰が家を継ぐか、という家族相続の話でまとめている。花組芝居らしく表紙、裏表紙にも薩摩琵琶の演者(平家物語の連想だろう)が出てくるが、肝心の中身の現代の蝗退治とその蝗を自然食品にして有効活用、僻地産業振興とする話が原作の世界と上手くかみ合っていない。堀越の本は現代のマンガに通じる面白さがあって、そこを無理矢理,花組流歌舞劇とつじつまを合わせたところは花組(演出・加納幸和)の力業である。4コママンガはよく家族を舞台にして、父母兄弟に家族・親戚とそこでキャラを作って成功させるが、こういう因果因縁の暗い話の枠取りには向いていない。「雑種小夜の月」では成功したがどこでも使えるわけではないだろう。
来春には,綺堂の平家蟹そのものを花組の本公演でやると言うから、それも見てみたいものである。