ビッグ虚無 公演情報 コンプソンズ「ビッグ虚無」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    タランティーノや『バッファロー'66』を思わせる作劇。軽口な与太話から世界の構造を解き明かす。駄目人間の駄目な人生を駄目駄目に描きつつ最高に笑わせる。これは映画『フォーガットン』の思想を正統的に受け継いだ作品だろう。岩松了みたいな渋い顔で凝視させて貰った。

    眠れない夜、何となく誰かに見られているような気がする。主人公の江原パジャマ氏は草薙航基を彷彿とさせる童貞を拗らせて“思想犯”になったような男。ヒロインの浅野千鶴さんはチェ・ジウ顔。

    開幕するとハプニングバー。SEX目的で大学生3人組が足を踏み入れる。モグライダー芝のようなツッコミがキレキレの細井じゅん氏。常に挙動不審な大宮二郎氏。江原パジャマ氏は全く盛り上がらないトークを武器に安川まりさんを口説くが無論相手にされない。常に怒り口調の星野花菜里さん。店員の堀靖明氏。次に江原パジャマ氏は浅野千鶴さんを見て中学の時好きだった家庭教師に似ていると思う。「どこかでお会いしましたか?」何とはなしに話していると突如超自然的な現象が勃発、巻き込まれてしまう。

    笑いに対するアンテナがパラノイアックで鋭敏。完全に気が違った人が正気を失う寸前に残したスレスレの文学。死ぬ程面白いが死ぬ程危険。まさしく「Folie à Deux」(フォリ・ア・ドゥ)=感応精神病。
    超満員の駅前劇場、笑いの声が鳴り止まない地響き。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    今年No.1の笑いだったがやはりハプバー脱出の辺りからどうでもいい描写が続く。好みになるんだろうが既視感のある物語の納め方、唐十郎っぽい語り口。自分はこの水戸黄門の印籠みたいな「演劇あるある」が余り好きではない。思考停止してしまう。

    『フォーガットン』とは、ジュリアン・ムーアにゲイリー・シニーズと大物俳優をキャスティングした馬鹿映画。息子を事故で亡くして苦しむ母親が、ある日そんな息子は存在しなかったと言われて怒り狂う。写真や記録が全て消え、夫も精神科医も妄想だと決めつける。国家安全保障局が関与している大規模な陰謀で国中で似たような事案が起こっていた。オチは宇宙人が人間の親子の絆に興味を持ち行なっていた実験だったもの。ジュリアン・ムーアが息子を忘れなかった為、実験は失敗に終わり、担当の宇宙人は空の彼方に吹っ飛ばされる。シリアスな語り口でトンデモなオチ。心に余裕がないと楽しめない映画。
    ※シャマランの『サイン』もこの系でお薦め。今をときめくホアキン・フェニックスがクライマックスで忘れられない名シーンを!

    「この世はすべて性癖だ」という悟り。良いも悪いも善も悪もそもそもない。救いも絶望もない。ブルーハーツも歌っていた。「確かなものは欲望だけさ。100%の確率なのさ」。
    ラストが『THE END OF EVANGELION』の「気持ち悪い」を彷彿とさせる「口臭い」。何処まで行っても他人は他人。

    「虚構とは何ぞや?」を禅問答的に突き詰めても経つのは時間だけ。筒井康隆は無意識の底に行けるだけ行こうとして発狂しかかった。言葉を使わずに思索した方が良い。言語化すると全てが置き換えられてしまう。

    0

    2024/10/18 13:46

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大