実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/10 (木) 14:00
座席1階
登場人物それぞれがもれなく個性豊かで、一人ひとりに物語がある見事な群像劇。これが作者の中島淳彦の真骨頂なのだろう。そして、歌唱シーンが多いなかで、出演者たちのさすがと思わせる歌の切れ味。シンガーとして活躍する宏菜は文句なしだが、それ以外の出演者の歌唱もとてもよかった。さらに、面白さが途切れることのない演出。これも、青山勝の真骨頂なのでしょう。楽しみにして劇場に来た価値があった。とても満足!
舞台は美空ひばりが生きていた昭和の時代、東京の下町にある居酒屋。主人はレコード会社の金を使い込んでヒットメーカーの立場を棒に振った元プロデューサー(佐藤達)。趣味で始めたような店を、しっかり者の妻(かんのひとみ)が切り盛りしている。そこに、大阪から上京してきた演歌歌手志望の若い女性(宏菜)と義理の兄(佐藤銀平)が「働かせてほしい」と乱入してくる。その直後には女性の姉(山像かおり)もさらに乱入。話は序盤から大変な騒ぎとなる。
複数盛り込まれた、宏菜の演歌歌唱は見事だった。そして、今作が舞台初出演とは思えない落ち着いた演技は次につながりそうだ。そして今作では、かんのひとみが頼りないだんなをしかり飛ばしたり、泥酔したり、多彩な演技を見せてくれる。特に泥酔シーンは恐るべき色気が漂い、迫力があった。
昭和の人情豊かな戯曲は数あれど、中島淳彦ならではの味わいはやはり格別。自分にとって、終幕後に「もう一度見たい」と思わせる舞台は数少ない。今作はその一つとなりそうだ。