実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め といっても東京公演の楽日に観劇。
三島由紀夫の或る小説をモチーフにした現代劇。同時に物語の設定から反戦劇といった印象も受ける。タイトル「ゆうせいむしむし」は、四字熟語「遊生夢死」の否定のよう。説明にあるように、戦争で死ななかった男が 意味ある「生」のために無謀な「死」へ向かう。
物語の始まりを戦後間もなくにしているところが妙。これによって生きらえてしまった復員兵が、これからどう生きていくのか、いや何もせず、ぼんやりと一生を過ごすのか。ここから三島作品をモチーフにした話が展開していく。チラシの表に「死ねなかったワタシの命 どなたか 買ってくれませんか」と。この突飛で物騒な言葉、日本人には それほど耳馴染みがないわけでもない。やくざ映画や浪花節など、どこかで聞いたことがある。勿論 物語に関係しているのだが、自暴自棄になっているのではなく、生きる価値を見出そうと もがいている<思い>のようだ。
小劇場の特長を生かした演出が巧い。少しネタバレするが、キャスター付きの何枚かの障子戸を回転させながら、情景と状況を描き出す。瞬時に転換するようで、実に小気味よい。
(上演時間1時間20分)