グローバル・ベイビー・ファクトリー 公演情報 劇団印象-indian elephant-「グローバル・ベイビー・ファクトリー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    凄まじい傑作。
    東京演劇アンサンブルの『彼女たちの断片』と同じ系譜。
    どうしたって女性にしか語れない問題、“出産”の核にあるものを掘り起こす。リーディング公演というよりもクラウドファンディング目的の読み合わせのようにも感じた。作品は完璧に完成している。誰か映画化してくれ。ト書きの通りに実際の公演の模様を容易く思い浮かべることが出来る。(実際、2014年3月に調布市せんがわ劇場にて公演済み)。いや、これ観たい。ラストをどう持っていくのかずっと気になっていたが成程!

    ギッチリ入った観客。テーマに対しての関心は高い。自分の子供を残す行為、DNAのバトンを未来に託すリレー、生物の本能。だが日本の現状は少子化の止まらない進行による超高齢化社会。2024年現在にて65歳以上の人口の割合は29.3%。間違いなく機能不全に陥る日本社会。未来の話ではなく今の現実だ。

    主演・砂子役の佐野美千子さんが最高。(砂子と名付ける親もどうかと思うが)。美人のキャリア・ウーマン、男を必要としない稼ぎ。全てを持っているが37歳という年齢に不安を覚えていく。父親(太田宏氏)、母親(佐野美幸さん)のプレッシャーに負けてお見合いパーティーに。(父親の台詞「ま〜わ〜り〜く〜ど〜く〜」が秀逸)。そこで出会った脚フェチの容器メーカー営業、佐藤滋氏と結婚。腹部に違和感を感じ、産婦人科へ。妊娠五週目だったが子宮頸がんと診断され子宮全摘出へ。これでもう自分の子供を持てなくなった絶望感。そこに現れた最後の希望、代理母出産。

    佐藤滋氏はゴン中山似。
    親戚の「結婚しないの」合唱団が素晴らしい。メチャクチャ完成されたコーラス。
    ト書きから卵子のクジャク、代理母の一人、ラストの赤ん坊まで演じた笹良まゆさんが芸達者。
    インド人代理母、ナジマ・ヴァグラを演じた大久保眞希さんも名演。ヒンディー語映画『愛するがゆえに』の主題歌、アリジット・シンの「Tum Hi Ho」を皆で歌うシーンは絶品。

    挿入される精子スキヤキ(太田宏氏)と卵子クジャク(笹良まゆさん)のエピソードが作品を多面的なものにしている。善悪ではなく事実の提示。
    「子供が欲しい」が「血の繋がった子供が欲しい」になり、今では「自分達のDNAを持った子供が欲しい」に。DNAなんて皆知らない方が良かったのかも。子供の意味合いが変わってしまった。

    泣けるシーンが多々ある。妊娠していた自分、胎児ごと殺して子宮を摘出しなければいけない自分。手に入った筈のものを知った時から痛切に迫る欠落感。狂おしい程この欠落感に悩まされる。

    今回カットされたシーンは佐藤滋氏の新鮮な精子を採るコミカルな場面。

    ネタバレBOX

    やはり光通信御曹司、重田光時氏(当時24歳)の騒動を思い出す。2014年、タイのコンドミニアムにて代理母に産ませた9人の赤ん坊が保護された。タイ当局は人身売買や臓器売買の目的を疑って捜査。だが裁判の末、重田光時氏の親権が認められ引き取られていった。他にも7人の赤ん坊、インドで産ませた2人もいるという。皆重田光時氏の精子と白人女性の卵子の受精卵からつくられたハーフ。捜査当時世話をしていた母親を名乗る27歳の日本人女性は性転換をした元男性で重田光時氏のパートナー。代理母一人に100万円以上払い当時で総額6000万円程注ぎ込んでいたという。自分名義の資産が100億円以上あった彼は大量に自分のDNAを持った子供を欲した。毎年子供を可能な限り作ろうと。あれから10年、どうなったのか?
    自分が愛し信ずるのは自身のDNAのみ、という宗教にも近い信念。自分のDNAで世界を埋め尽くしていこうという野望。突拍子もないが感心する。

    この作家もこの事件に刺激を受けたらしく、男性から描く代理出産ビジネスとして、2015年8月『グローバル・ベイビーファクトリー2〜Global Baby Factory2〜』を公演。これも観たい。

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    2024/10/02 11:29

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