実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/09/05 (木) 19:00
座席1階
「あの瞳に」というタイトルの意味を、劇場を後にして反すうすることになる。くるみざわしんらしい、見事な脚本だった。テーマは従軍慰安婦と写真展。右派の反対運動を恐れて行政や大企業が口をつぐんでしまうという事態が相次ぐ中で、意欲的な舞台だ。
世界に冠たる大手カメラメーカーが従軍慰安婦の写真展を開こうとしたが、SNSなどで脅迫めいた投稿が相次ぎ写真展の担当者男性は中止を決定する。表現の自由を制限したとしてこの男性は訴えられ敗訴するが、男性は株主総会の炎上や会社の上層部を守ったとして形ばかりの取締役に引き立てられ、南国の島に「左遷」させられる。
男性と妻が島で暮らしているのは、会社が所有しているリゾート物件。だが、実はこの建物にまつわる、避けては通れない歴史があった。それは舞台の進行で明らかになる。閑職に追いやられた男性はフリーマーケットで天使の人形を買い集める。この天使の人形の瞳が何を語るのか。舞台はこの島での従軍慰安婦の歴史や、歴史を記録する写真というメディアの価値など、さまざまなことを客席にぶつけていく。
Pカンパニーの「罪と罰」シリーズには定評がある。それに加え、今回はくるみざわしんの戯曲とのことで期待して出かけた。期待を裏切らない出来栄えだったが、途中に休憩をはさんだのはもったいなかった。せっかく盛り上がった緊張感が途切れてしまった。でも、それだけで☆を減らすのはどうかなと思って五つにした。登場する俳優たちも、それぞれ独特の個性や役割を与えられた配役を、きっちりこなしていた。