三ノ輪の三姉妹 公演情報 かるがも団地「三ノ輪の三姉妹」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    チラシの写真も素敵で気になっていた、かるがも団地『三ノ輪の三姉妹』。初日観劇。
    登場人物たちの心の動線が丁寧に張り巡らされていて、そのことが導く風景にも奥行きがありました。独特のチャームをもった台詞回し、語りと会話の継ぎ目のシームレスさ、作家の個性、俳優の魅力を端々に感じる演劇で、観られてとてもよかった!

    誰を切り取っても人物造形が丁寧で、どこか自分に似たあの人も、全然似てないその人も、其々ちがうみんなの気持ちが少しずつわかってシンパシーとエンパシーを重ねながら観ました。
    自分の家族にもこう思えたらな。下町でそれぞれの暮らしを送る姉妹とも、そして、姉妹を生み育てたお母さんとも手を取り合いたい。そんな気持ちでした。

    俳優さんがとにかくチャーミングで、みんな少し可笑しくて、でもその可笑しさの裏でそれぞれが何かを背負ったり抱えたりしていて、姉妹に限らずそれゆえの明るさがとても愛おしかった。生きてきた歩みや人生の見えるお芝居の数々でした。

    四人姉妹に生まれ、卒論を向田邦子で書いた身としては(あくまで単なる設定という意味で)『阿修羅のごとく』を想起もしたけれど、家父長制(のようなもの)や男性性(のようなもの)についての視点を携えつつ、ただの批判や糾弾に収めないことでより人間やその関わるの複雑さがリアルに描かれているように感じました。
    あと、選べない境遇の元で今を生きていく上での息苦しさを生々しく切り取っていたところにも惹かれました。明るく、温かいけれど、きちんと生々しい。そんなところに惹かれました。

    グッとくるシーンたくさんあったのですが、美容室のシーン好きだったな。
    (以下ネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    誰かに髪をなでられるときにだけ緩まる何かを私たちはこの身体にもっているような気がしていて、三姉妹にとってそういう場所があることが私はとてもうれしかった。
    あと、生まれ育った環境が真逆の恋人の存在も。「わかりあえなさ」だけでなく、そこを飛び越えようとする姿までを筆と芝居が追ってくれたことに救われた。
    同棲と一人暮らしについての議論も必要なシーンだったと感じました。

    家族の仲の良さなんてものは本当に外からはわからないもので、それぞれの形があるけれど、不器用だけど懸命な人たちがそれぞれの場所で、たとえば商店街や海のそば、2LDKのマンションなんかでそれぞれ楽しく生きていてほしい。それから時々つながって、相変わらずのその煩わしさに嫌気がさしたり、それでもやっぱり気にしあったりしながら生きていけますように。

    ちなみに私は四姉妹の三女。誰かと誰かの間に時々挟まり、おしゃれと居酒屋はとても好きで、ここだと思う職場と出会うまでに遠回りをしてきました。ちなみにちなみに、姉妹との最後のやりとりは昨晩のグループライン。ある必要に迫られて4人全員が映っている写真を送り合った。気に入る写真も夕飯に食べたいものも、いつも意見は割れるし、些細なことで揉めたりもするけど、雨が降ったら傘の中に入れてあげるし、入れてくれる人たちではあるかなあ。

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    2024/08/31 19:09

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