妻の感覚 公演情報 公益社団法人日本劇団協議会「妻の感覚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「建国神話が浮かび上がらせる韓国社会」

     日本でも邦訳上演されてきた韓国の劇作家コ・ヨノクの作品である。過去にも同作を手掛けたことがあるキム・ジョンが今回も演出した。

    ネタバレBOX


     山で迷子になった女(小暮智美)は熊に助けられ、やがて子どもを授かる。しかし女は熊との間に設けた子どもを猟師(荒川大三朗)に殺されてしまう。他方、森に置き去りにされた男(大塚航二朗)は女に助けられ、やがて女との間に子どもを設ける。当初は幸せそうであったが、やがて二人の間にじょじょにほころびが生じはじめる。男は女友達(荒木真有美)への思いに揺れ、会社では社長(齊藤尊史)に詰め寄られる。かたや女は母(鬼頭典子)との関係に悩む。不穏な空気にはかつて女が交わった熊の存在が横たわりーー

     パンフレットに掲載された作者のコメントによれば、韓国の原始部族には熊と人が結婚し家族を築く神話があり、それが建国神話になっているのだという。本作は韓国社会が歴史的に直面してきた家父長制への鋭い批判を描きつつ、家庭や会社に縛られてがんじがらめになっている男性の嘆きを描くことに成功していた。

     殺風景な舞台上では出演者が箱馬を使い、心情を代弁するかのようにブロックを立てたり、演技スペースを作っていたところは見応えがあった。男と女以外の俳優が持役以外の役に声を当てたり、舞台上を駆け回るようにして動くなど手数が多い演出はめまぐるしい。惜しむらくは照明変化が原色中心で微細な心情を描くまでには至ってなかった点と、男と女の話に焦点が絞られる後半は他の俳優が作品のパーツのように扱われていた点である。

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    2024/08/30 16:55

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