ニルバナナナノニ 公演情報 発条ロールシアター「ニルバナナナノニ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    表層的には、説明通り 河原に立つブルーシートハウスに住む男を中心とした日常劇。しかし物語に隠された劇作家の意図は別のところにあるような気がしてならない。この意図に共感し共鳴できるか否かで評価が分かれそう。観劇した日は台風の影響で大雨、全国各地で被害が出ているとの報道もある。この物語は、そんな自然災害を連想させ、観る者に強く訴えてくるような。

    一方、説明通りの解釈ならば、社会生活に疲れた人々が何のしがらみもない 自由気ままに過ごす場所を見つけ ひとときの幸福に浸っている。物質的な富はないが心の安息は得られている、人は何かを得て何かを捨てている、そんな当たり前の光景が描かれている。

    不寛容・無関心になってきた今だからこそ、信じ助け合うという共助・共生が大切だと。ただ 演劇の面白さやメッセージがストレートに伝わるかどうかは分からない。
    (上演時間1時間35分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術…冒頭はブルーシートで覆った段ボール箱、下手に洗濯物が干してある。場面に応じて段ボール箱を変形させて、ブルーシートハウス内や宮殿風の光景を現す。すべて段ボール箱で作っており、ホームレス(安価 簡易?)という状況を表現している。

    説明通りであれば、空腹で行き倒れになりそうは浮浪者、自殺しようとして止められたサラリーマン、浮浪者から荷物をひったくろうとした男、そして 立ちんぼ している若い女性、毎日曜日に慰問にやって来る女性歌手、そんな個性豊かで癖が強い人々が集まってくる。そして何かとブルーシートハウスに来る市役所の職員、当初は立ち退きを巡る攻防かと思っていたが…。それぞれ心に何らかの心配事を抱え、それでも淡々と暮らしている。その光景は<平和平穏>といった当たり前の暮らしを独特の世界観で描いている。

    自分の勝手解釈は、ラスト 敢えて波の音を響かせることから、ブルーシートハウスに身を寄せているのは被災者で、そこに行政(市の職員)が絡んだ物語。勿論 東日本大震災を始めとした被災の光景を連想した。劇中 毎日曜日に慰問にやって来る歌手スーパースター、実は八百屋を営んでいる。夫は漁に出たまま何年も帰らず、1人で子供を育て商売を営んでいる。そんな夫から手紙が届くが ずいぶん前に投函されたものが今届く。立ちんぼの少女に親兄弟はいるのか はっきり描かない。何となく被災孤児、人に優しくされるよりは 自分の方から寄り添いたい。そこに寂しいが逞しく生きていくといった気持が見えるよう。更に、作演出の則末チエさん演じる松前数之子が、他の浮浪者の情報を収集し市職員に提供している。それが 被災者の情報・動向を官民一体となって取り組んでいるように思える。

    市職員は、生活保護に係る手続など面倒を見てくれるが、その支給される金額の一部を搾取している。小悪党的な役割を担っているが、例えば元・経済産業省のキャリア官僚による“新型コロナ対策”の給付金を騙し取った詐欺罪などを連想する。苦境に喘いでいる人々=庶民の<非常時 不安>が透けて見えるのだが…。
    この公演は、観る人の感性に委ねられているように思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/08/30 16:53

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