実演鑑賞
満足度★★★★
人生にはうまくいかない時や躓く時もある。これから先どうすればよいのか迷い悩んでしまう。そんな時 占ってもらい、少し背中を支えてもらうか押してもらう。占いは悩み相談でもあり、救いという自己暗示の効果を期待しているよう。
タイトルが意味深であったが、「愚者」「星」「死神」は、タロット(占い)結果における過去・現在・未来を表している。物語は、恵比寿にあるBarを舞台に繰り広げられる再起劇。まだ何者にもなれない症候群のような若者、職場環境・人間関係に悩む中年女性、承認欲求が強いユーチューバー、そしてBar経営者の気持を丁寧に掬い上げる。
登場人物は全て女性、一生懸命やればやるほど人との関係が拗れる。そんな歯がゆい思いが激情となって ますます相手を追い詰める。日常に見られる どうしょうもない光景、それでも占いに救いを求める切なくも滑稽な話。
エビスSTARバーを舞台に、間近で観る光景は、そこで起きている日常を覗き見ているような感覚。公演の魅力は、等身大の人々のリアルな生活が描かれているところ。そこに現代的な問題を落とし込み、その問題の捉え方に表裏があること、更にそれをタロットカード(占い)に絡める巧さ。まさに人間洞察、そこに脚本・演出の池田智哉氏の真骨頂をみる。
(上演時間1時間20分 休憩なし)