べらんだぁ占い師シゲ子 公演情報 四宮由佳プロデュース「べらんだぁ占い師シゲ子」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ハートフルコメディといった物語だが、描き方によっては怖い話にもなる、そんな深みのある公演。少しネタバレするが、ナレーションと書かれた名札を付けた男が情況等を説明するが、それでも曖昧なところがある。だだ些細なことに拘っていると面白味、その醍醐味を見失うかもしれない。

    タイトル・説明から、占い師 シゲ子が ひょんなことから自宅マンションのベランダで占いを始め、”よく当たる”と評判になるというもの。占ってもらいたい人々の内容とシゲ子のアドバイスが物語の肝。占い事は悩み相談でもあり、何か共通するものがあって収斂していくというよりは、ありがちな悩みを点描する。そこに現代人が抱える心情が浮き彫りになり、シゲ子のアドバイスが心に染み込んでいく。

    これが国家社会が絡むと別の様相を帯びた物語へ変貌する、そんな紙一重の公演。また、自分はある小説をも連想し、色々な意味で楽しみ 考えさせられた好作品。
    (上演時間1時間40分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は暗幕で囲い、上手/下手にベランダ柵の一部。そして下手の一部に穴が開き、その前に観葉植物を置いただけのシンプルなもの。
    下村シゲ子(四宮由佳サン)が住んでいるマンションの隣室に勅使河原俊一郎という男が引越してきた。その挨拶をベランダ壁の穴を通ってくるという非常識さ、その後も頻繁にその穴からやってくる図々しさ。そして いつの間にか占ってもらいたい人を連れてくるようになる。図太い この男の目的は何か?後々解るが大した意味はなく、そのままの人物像だ。この人物が道化師的な存在、役割を担っているようだ。

    シゲ子の占い=実は生まれつきの能力で、相手の体に触れると内心が分かる。将来を占うというよりは、相手の悩み事が分かり寄り添うアドバイスをする。例えば、カスハラ対策のため必要以上に丁寧な言葉遣いを求める上司との関係、全力で事(仕事や恋愛等)に向き合わず、失敗することを恐れ ある程度のところで妥協してしまう。親友と思っていた女子高生、しかし相手は恋愛(同性愛)感情を持っており 今後どう付き合えば、など現実にある切実問題を突き付ける。観客の中にも経験があるようなこと、それに寄り添うような言葉に納得や共感を抱くのだと思う。
    一方、相手にしてみれば 自分の心の中が見透かされてしまう怖さ、劇中でもあったが学生時代の親友で兄の妻になったクミコの心を勝手に覗き、兄のことを まだ好いていることを確認してしまう。

    占い一見(相談事)は回想として描き、それをオムニバス風に紡いでいく。心情としては実に分かり易い。キャストは 占ってほしい客であり回想シーンの人物、その複数役を担うがマスクをすることで人物像を違える。少し気になるのは、シゲ子の内心ーー生まれ持った能力を持て余す、または怖いと思ったことがないのか。その懊悩のようなものが感じられなかったこと。シゲ子曰く、自分のことは占えない(占った人々の思いを介して自分のことを知るだけ)。
    なお、照明や音響・音楽といった舞台技術は強調していないが、物語を邪魔しないよう控えめ。それでも優しい音色は聞こえる。

    シゲ子は「サトリ」の能力だが、一方「サトラレ」という能力もある。いずれにしても人の心が読める人間などは、国家機密/戦略上などの重要または危険人物になる。小説「家族八景」(筒井康隆作)では、主人公の少女が夫々の家族の内面を読んでしまい行く先々の家庭に亀裂や事件を起こす。続く<七瀬シリーズ>では超能力者たちは迫害を恐れ能力を隠していると。その意味ではコメディにもシリアスにもなり得る面白さ、その両面を併せ持つ好作品。本作は前者に特化して観(魅)せている。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2024/07/25 05:44

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大